内部通報窓口の作り方|公益通報者保護法改正対応・中小企業の設置実務【弁護士解説】

内部通報窓口の作り方|公益通報者保護法改正対応・中小企業の設置実務【弁護士解説】

和氣 良浩

監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会

大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。

「うちは従業員300人以下だから内部通報窓口は関係ない」と考えている経営者は少なくありません。しかし2022年6月施行の改正公益通報者保護法では、300人以下の企業にも体制整備の努力義務が課されています。義務か努力義務かにかかわらず、内部通報窓口がないままでは、社内の不正やハラスメントが表面化せず、気づいたときには被害・損害が大きくなっているケースが少なくありません。

弁護士法人ブライトの「みんなの法務部」では、大阪の中小企業から社外内部通報窓口の設置に関する相談を継続的に受けています。本記事では、法改正の要点から、社内窓口と外部窓口(顧問弁護士窓口)の比較、実際の設置ステップ、通報を受けたときの初動対応まで、中小企業が現実的に運用できる形で解説します。

内部通報窓口の設置・運用を検討中の方へ

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内部通報窓口とは何か-公益通報者保護法改正で何が変わったか

2022年6月施行の改正のポイント

公益通報者保護法は2022年6月に改正が施行され、事業者に対して内部通報に適切に対応するための体制整備が求められるようになりました。ポイントは従業員数による区分です。

  • 常時使用する労働者が301人以上の事業者:内部通報体制の整備が義務
  • 常時使用する労働者が300人以下の事業者:内部通報体制の整備は努力義務

「努力義務だから対応しなくてよい」と読むのは早計です。努力義務であっても行政の指針(消費者庁「公益通報者保護法に基づく指針」)は中小企業にも同様の水準を求めており、取引先からのコンプライアンス調査や、金融機関・投資家からの体制照会で内部通報窓口の有無を問われる場面が増えています。

体制整備の中身-指針が求める3つの要素

改正法・指針が求める体制整備は、大きく分けて次の3要素です。

  • 窓口の設置:通報を受け付ける窓口(社内・社外いずれか、または両方)を明確にすること
  • 調査・是正措置:通報を受けたら適切に調査し、必要な是正措置をとること
  • 不利益取扱いの禁止:通報したことを理由に、解雇・降格・減給などの不利益な取扱いをしないこと

窓口を作るだけでは足りず、「調査が機能すること」「通報者が不利益を受けないこと」まで含めて初めて体制整備といえます。

中小企業でも設置が増えている理由

大阪の中小企業から弁護士法人ブライトに寄せられる相談として実務上多いのは、次のようなきっかけです。

  • 元請け・親会社から、コンプライアンス体制強化の一環として社外通報窓口の設置を求められた
  • IPO準備や資金調達に向けて、ガバナンス体制の整備が必要になった
  • 過去にハラスメント・不正会計等の申告が社内で埋もれてしまった経験があり、再発防止のために整備したい

努力義務の段階でも、取引先や投資家からの要請が実質的な導入の引き金になっているのが実務上の傾向です。

内部通報窓口が果たす役割と「機能する制度」の条件

通報を受ける・調査する・是正する・不利益取扱いを防ぐ、の4機能

内部通報窓口は単なる「意見箱」ではありません。実効性のある制度には、次の4つの機能が揃っている必要があります。

  1. 通報を受け付ける(メール・電話・書面など複数の経路)
  2. 事実関係を調査する(中立的な立場でのヒアリング・証拠確認)
  3. 調査結果に基づき是正措置をとる(懲戒処分・業務改善・再発防止策)
  4. 通報者・調査対象者双方への不利益取扱いを防ぐ

このうち特に中小企業で弱くなりがちなのが「調査」の部分です。社内に調査担当者を置いても、通報対象者が役員や社長本人であった場合、社内だけでは中立性を確保できません。

従事者指定と守秘義務

公益通報者保護法12条では、内部通報の受付・調査等の業務に従事する者(従事者)に、正当な理由なく通報者を特定させる情報を漏らしてはならないという守秘義務が課されています。従事者には刑事罰の対象となる守秘義務が及ぶため、誰を従事者として指定するかは制度設計の重要なポイントです。実務上、通報者を特定できる情報や特定につながり得る情報は、通報者本人の同意がない限り、会社側にも開示できないという運用になります。この点を経営者側が正しく理解していないと、「なぜ通報者を教えてくれないのか」という摩擦が生じやすくなります。

「形だけの窓口」が招くリスク

規程を作り、窓口用のメールアドレスを用意しただけで運用が止まっている「形だけの窓口」は、次のようなリスクを招きます。

  • 不正・ハラスメントが長期間放置され、被害・損害額が拡大する
  • 通報しても対応してもらえないという不信感から、従業員が外部(労基署・報道機関・SNS等)に直接通報する
  • 調査体制の不備が後から発覚し、会社側の管理責任(安全配慮義務違反等)を問われる

窓口の有無より、「通報が来たときに実際に機能するか」が本質的な論点です。

「形だけの窓口」で終わらせないために

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社内窓口 vs 外部窓口(顧問弁護士窓口)の比較

社内窓口のメリット・デメリット

社内窓口(総務・人事・コンプライアンス担当者等)は、導入コストが低く、社内事情に精通しているという利点があります。一方で、次のようなデメリットが実務上よく指摘されます。

  • 通報対象が上司・役員の場合、通報者が「もみ消されるのではないか」と不安を感じ、通報をためらう
  • 担当者が調査対象者と近い関係にある場合、中立性を保つのが難しい
  • 担当者に法的知識がなく、初動対応(証拠保全・ヒアリング手法)を誤るリスクがある

外部(弁護士)窓口のメリット・デメリット

外部の弁護士に窓口を委託する最大の利点は、社内の人間関係から独立した中立性です。通報者から見ても「社内の誰かに知られる心配がない」という安心感があり、通報のハードルが下がります。デメリットとしては、社内事情の把握に一定の説明コストがかかること、費用が発生することが挙げられますが、顧問契約がある場合は費用面の負担を抑えやすくなります。

費用体系-タイムチャージ制の考え方

社外通報窓口の費用体系として、大阪の中小企業から実務上よく選ばれているのが、月額固定費を設けず、実際に通報があり弁護士が調査・対応した場合にのみ費用が発生する「タイムチャージ制」です。過去に外部への通報実績がほとんどない企業でも、平時のコストを最小限に抑えながら、法改正に対応したコンプライアンス体制を構築できる点がメリットです。窓口の受付方法についても、メールだけでなく手紙での相談を可能にするなど、従業員が使いやすい経路を複数用意しておくことが実務上推奨されます。

項目 社内窓口 外部(弁護士)窓口
中立性 通報対象が役員等の場合、確保が難しい 社内の人間関係から独立している
通報のしやすさ 社内に知られる不安から通報が減る傾向 秘密が守られる安心感から通報されやすい
初動対応の専門性 担当者の経験に左右される 証拠保全・ヒアリング手法に精通
費用 追加コストは小さい タイムチャージ制なら平時コストを抑制可能

実務上は、一次受付は社内、専門的な調査・重大案件は外部弁護士という「併用型」も選択肢になります。取締役・社長が通報対象になり得る中小企業では、外部窓口を主軸に据える設計が現実的です。

社外通報窓口の費用体系・契約内容をご相談ください

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内部通報窓口の設置ステップ(規程・契約・周知)

通報窓口規程の整備

まず必要なのは、通報窓口規程(内部通報制度に関する社内規程)の整備です。最低限、次の項目を明確にします。

  • 誰が通報できるか(正社員だけでなく、契約社員・派遣社員・取引先の従業員まで対象を広げるか)
  • どのような事項を通報の対象とするか(法令違反、社内規程違反、ハラスメント等)
  • 受付方法(メール・電話・書面・面談のうちどれを用意するか)
  • 調査の流れと担当者(誰が従事者として指定されるか)
  • 不利益取扱いを禁止する旨の明記

外部委託する場合の業務委託契約チェックポイント

弁護士に社外窓口を委託する場合、業務委託契約書で確認しておくべきポイントは次のとおりです。

  • 報酬体系(月額固定か、タイムチャージか、対応範囲の上限時間)
  • 秘密保持の範囲(通報者を特定させる情報の取扱いと、公益通報者保護法との関係の明記)
  • 通報対応を担当する弁護士の範囲(誰が窓口として対応するか)
  • 契約開始時期・更新条件
  • 顧問契約がある場合、通報対応が顧問契約の相談時間に含まれるか、別途費用になるかの切り分け

社員への周知方法

制度を作っても、社員に周知されていなければ機能しません。就業規則・社内イントラ・入社時研修等で、窓口の存在・利用方法・不利益取扱いを受けないことを繰り返し伝える必要があります。

ステップ 内容
①制度設計 対象範囲・受付方法・調査体制を決め、通報窓口規程を整備する
②委託先の選定・契約 社内窓口か外部委託かを決定し、外部の場合は業務委託契約を締結する
③受付経路の準備 専用メールアドレスの設定、電話・書面での受付方法の確保
④社内周知 就業規則への反映、社内イントラ・研修での告知
⑤運用・見直し 通報実績の有無にかかわらず、定期的に規程・体制を見直す

通報を受けたときの初動対応(実務フロー)

受付〜調査体制の立ち上げ

通報を受けたら、まず速やかに受付を行い、調査体制を立ち上げます。対応が遅れるほど証拠が散逸し、被害が拡大するリスクが高まります。窓口が弁護士である場合は、受付後すみやかに事実関係の整理と、調査の進め方(誰にヒアリングするか、どの資料を確認するか)を検討します。

ヒアリングの進め方と中立性の確保

調査では、関係者双方から中立の立場でヒアリングを行い、ヒアリング内容から認定できる事実関係に基づいて対応を検討することが基本です。実務上、両当事者のヒアリング記録・録音の取扱いには注意が必要です。事案や証言内容によっては、記録をそのまま双方に開示することで感情的な対立を激化させかねないため、開示の要否・範囲は慎重に判断します。また、加害者とされる人物が経営者の親族・役員である場合など、社内の力関係が調査に影響しうるケースでは、外部の中立的な立場からの調査が特に有効です。

不利益取扱いの禁止と通報者保護

通報を理由とした解雇・降格・減給などの不利益取扱いは、公益通報者保護法で禁止されています。また、通報者が調査への協力や事実関係の開示を望まない意向を示すケースもあります。この場合、通報者の意向を尊重しつつ、会社としてどこまで調査を進めるかを個別に判断する必要があり、画一的な対応は困難です。窓口担当者には、通報者の意向確認と、会社としての調査義務のバランスを取る専門的な判断が求められます。

通報を受けてしまった場合の初動対応もご相談ください

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弁護士に相談すべきケース

次のいずれかに該当する場合は、内部通報窓口の設置・運用について弁護士への相談を検討してください。

  • 従業員数301人以上で、体制整備義務への対応がまだ終わっていない
  • 取引先・親会社からコンプライアンス体制の照会を受けたが、社内に窓口がない
  • 社内窓口はあるが、実際に通報が来たことが一度もなく、機能しているか不安
  • ハラスメントや横領・不正の申告が過去に社内で埋もれてしまった経験がある
  • すでに通報を受けてしまい、調査の進め方が分からず対応が止まっている

ハラスメント相談窓口の整備については、カスタマーハラスメント相談窓口の設置と共通する論点も多く、社内相談窓口全体の設計として合わせて検討することをおすすめします。

よくある質問

Q. 従業員300人以下の会社は内部通報窓口を作らなくてもよいですか?

A. 法律上は努力義務にとどまりますが、取引先・金融機関からのコンプライアンス照会や、不正の早期発見の観点から、300人以下の企業でも設置を検討する動きが実務上増えています。大阪の中小企業でも、顧問契約の一環として窓口設置を進めるケースがあります。

Q. 過去に通報実績がほとんどないのですが、それでも窓口は必要ですか?

A. 通報実績がないことは、不正がないことを意味するとは限りません。窓口がないために従業員が通報をあきらめている可能性もあります。タイムチャージ制など、通報が実際にあったときのみ費用が発生する契約形態を選べば、平時のコスト負担を抑えながら体制を整備できます。

Q. 顧問弁護士がいれば、追加費用なしで通報窓口も対応してもらえますか?

A. 窓口の設置自体は顧問契約の範囲内で対応できることが多い一方、実際に通報を受けて調査対応が発生した場合は、顧問相談の範囲を超える工数となるため、別途タイムチャージ等の費用が発生するのが一般的です。契約時に報酬体系を明確にしておくことが重要です。

Q. 通報者が誰かを会社に教えてもらうことはできますか?

A. 公益通報者保護法上、通報者を特定させる情報や特定につながり得る情報は、通報者本人の同意がない限り開示できません。会社側にとってはもどかしい部分もありますが、通報者保護の観点から必要な運用です。

Q. すでに通報を受けてしまいました。今から弁護士に相談しても間に合いますか?

A. 調査の初期段階であれば十分に対応可能です。ヒアリングの進め方や証拠の整理を誤ると後の対応が難しくなることがあるため、対応方針が固まる前の早い段階でのご相談をおすすめします。

内部通報窓口の設置は「みんなの法務部」にご相談ください

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本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の事案に対する法律アドバイスではありません。個別の対応については弁護士にご相談ください。

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