監修:和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会 大阪で中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供しています。 社員が連絡なく欠勤し、電話やメールにも応答しない。会社としては業務の穴を埋めながら、「いつまで待つのか」「退職扱いにできるのか」「解雇通知をどこへ送るのか」を判断しなければなりません。 無断欠勤が続いても、欠勤日数だけで自動的に退職又は解雇になるとは限りません。病気・事故・家族事情など連絡できない事情がある可能性を確認し、就業規則、雇用契約、連絡履歴、本人の説明を踏まえて対応を選びます。会社が連絡を尽くした経過を残すことは、本人の安全確認にも、後の手続の説明にも役立ちます。 この記事では、会社側・使用者側が進めるべき初動、連絡記録、通知書の記載例、復帰・退職勧奨・解雇を検討する際の確認点を整理します。 無断欠勤の通知を出す前に、連絡記録と手順を点検しませんか 弁護士法人ブライトは、法務部がない会社の外部法務部です。顧問先142社以上、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の体制で、初動から再発予防まで支援します。 会社側の対応を相談する 顧問サービス(みんなの法務部プラン)を見る 無断欠勤・音信不通が判明した当日の初動 安全確認と勤務予定を確認する まず、出勤予定、休暇申請、シフト変更、上司への連絡、勤怠システムの記録を確認します。本人が事故や急病で連絡できない可能性もあるため、社内で「問題社員だから来ない」と決めつけないことが大切です。 緊急性が疑われる事情がある場合は、会社だけで抱え込まず、緊急連絡先への連絡や、公的機関への相談も検討します。緊急連絡先へ伝える内容は、安否確認に必要な範囲に絞り、社内評価や処分方針を広げないようにします。 連絡手段を一つに限定しない 会社からの電話だけで終わらせず、本人が通常使用しているメール、業務チャット、SMSなどを組み合わせます。連絡のたびに、日時、手段、宛先、伝えた内容、応答の有無を記録します。私用SNSへ繰り返し接触したり、家族や同僚へ事情を広く知らせたりすることは避けます。 業務の引継ぎとアクセス管理 顧客対応、締切、鍵・端末・アカウントの状況を確認し、必要に応じて暫定担当者を決めます。アカウント停止は、情報保護と業務継続に必要な範囲で行い、懲戒処分のような社内告知を先行させないようにします。 初動の連絡文面から確認できます 欠勤理由を確認する連絡と、出勤を求める通知を段階に分けて設計します。 無断欠勤対応を相談する 会社が残すべき連絡記録 記録項目 具体例 目的 欠勤状況 勤務予定、欠勤日、休暇申請の有無 無断欠勤と評価する前提を確認 連絡履歴 日時、手段、宛先、送信内容、応答 会社が確認・督促した経過を残す 本人からの説明 欠勤理由、診断書等の提出、復帰希望 正当な理由や必要な配慮を検討 業務への影響 納期変更、代替要員、顧客対応 抽象的な非難ではなく影響を把握 社内判断 判断日、参加者、確認資料、次回確認日 後付けの説明を避ける 記録では、「無責任」「やる気がない」などの人格評価を避けます。本人から体調やハラスメントの申告があった場合は、無断欠勤の問題と分けて調査し、必要な対応を検討します。 本人へ送る最初の連絡文と出勤督促通知の記載例 最初の連絡は安否と事情確認を中心にする 初回連絡の例 本日○時現在、出勤及び欠勤のご連絡を確認できていません。安否と状況を確認したいため、本日○時までに、上司○○へ電話又はメールで連絡してください。病気その他の事情により連絡が難しい場合は、可能な方法でその旨を知らせてください。 初回から処分を断定する表現を使うと、事情確認より結論を優先した印象になります。就業規則の連絡方法を示しつつ、本人が連絡できる選択肢を用意します。 応答がない場合の出勤督促通知 出勤・連絡督促通知(記載例) 当社は、○年○月○日以降、あなたの出勤及び欠勤理由の連絡を確認できていません。当社から○月○日、○日及び○日に、電話・メール等で連絡しましたが、○月○日現在、回答を確認できていません。 本通知を確認後、○月○日○時までに、欠勤理由、現在の状況、今後の出勤意思について担当者○○へ連絡してください。就業が困難な事情や提出できる資料がある場合は併せて知らせてください。 期限までに連絡がない場合は、当社が確認できる事実と就業規則に基づき、今後の対応を検討します。 期限は、通知の到達に要する時間、本人の状況、回答に必要な準備を考慮します。すべての案件に共通する固定日数を当てはめるのではなく、連絡経過に応じて設定します。 送付方法と到達記録 登録住所への郵便、メールなど、複数の方法を検討します。内容証明郵便は、どの内容をいつ差し出したかを残す方法ですが、受取の有無や本人の状況を自動的に確定するものではありません。不在・受取拒否・転居が疑われる場合は、返送状況も保存し、次の手段を検討します。 通知の期限・宛先・表現を個別に点検します 「連絡がなければ即解雇」と断定する前に、就業規則とこれまでの連絡経過を確認します。 通知書を出す前に相談する 連絡が取れた後の4つの選択肢 1. 復帰と欠勤手続を調整する 病気や事故などの事情が確認できた場合は、欠勤・休職制度、診断書、復帰条件、業務上の配慮を検討します。無断欠勤だったという一点だけで結論を急がず、就業規則と本人の説明を確認します。 2. 注意指導と再発予防を行う 連絡可能だったにもかかわらず社内ルールに沿った連絡がなかった場合は、注意指導書を交付し、今後の連絡先、期限、代替連絡方法を具体化します。管理職によって対応が変わらないよう、欠勤連絡の社内手順も見直します。 3. 合意退職・退職勧奨を検討する 本人に復帰意思がなく、双方が労働契約の終了を希望する場合は、退職日や精算を合意する方法があります。会社から退職を促す場合は、本人の自由意思を尊重し、執拗な面談やその場での署名要求を避けます。 4. 懲戒又は解雇を検討する 長期の無断欠勤や督促への不応答がある場合でも、直ちに懲戒解雇が有効になるわけではありません。就業規則の根拠、欠勤の理由、連絡の経過、業務への影響、本人へ説明の機会を設けたか、処分の均衡などを検討します。 労働契約法15条は懲戒、16条は解雇について、客観的合理性と社会通念上の相当性を欠く場合の無効を定めています。会社の就業規則に「○日以上の無断欠勤」と記載されていても、その条項だけで個別判断を省略することはできません。 解雇を検討する場合の確認事項 解雇の理由と手続を分けて考える 解雇の理由が客観的に合理的で社会通念上相当かという問題と、解雇予告を行ったかという問題は別です。厚生労働省は、原則として30日前に予告し、予告しない場合は30日分以上の平均賃金を支払う必要があると説明しています。 「懲戒解雇なら予告手当が常に不要」とは限りません。解雇予告除外認定の要否や要件は、労働基準監督署への確認を含めて慎重に検討します。予告手当を支払ったから解雇が有効になるわけでもありません。 有期契約の途中解約 有期契約の期間途中の解雇には、無期契約とは異なる確認が必要です。雇用形態、契約期間、更新状況を先に確認します。雇止めと解雇を混同せず、通知時期や理由説明も整理します。 解雇通知書に記載する事項 対象者、意思表示、効力発生日、理由、根拠規定、予告又は手当の扱い、貸与品や精算の案内などを整理します。ただし、理由の書き方は将来の紛争に影響するため、事実と規定に即して作成します。 解雇か、復帰支援か、合意退職かを整理します 会社の希望だけでなく、就業規則、連絡経過、本人の事情、業務への影響を並べて選択肢を検討します。 個別の状況を相談する 「みなし退職」条項だけで処理しない 就業規則に、一定期間の無断欠勤や連絡不能を退職扱いとする規定があっても、本人に退職意思があるのか、実質的に会社から労働契約を終了させるものではないかを確認する必要があります。条項の日数が経過したことだけで、自動的に処理できると断定するのは危険です。 退職日、離職理由、賃金・社会保険、貸与品、私物など、実務処理も残ります。就業規則の文言と実際の運用が合っているかを確認し、必要なら規程を見直します。 無断欠勤を繰り返さないための社内運用 欠勤連絡の宛先・期限・代替手段を就業規則や社内ルールに明記する 緊急連絡先の利用目的と更新時期を決める 管理職が使用する初回連絡文・記録様式を統一する 病気、休職、ハラスメント申告がある場合の引継先を決める 注意指導後の確認日を決め、放置しない 一件の無断欠勤への対応だけでなく、連絡ルールと管理職の運用を整えることが再発予防につながります。顧問弁護士が継続して関与する場合、初動の相談、通知書の点検、就業規則の見直し、管理職向けの運用まで一貫した方針で支援できます。顧問契約が必須という意味ではなく、スポット相談との違いを比較して選べます。 会社が作る書類全体は「問題社員対応で会社が作る書類」も参考にしてください。 よくある質問 Q. 無断欠勤が何日続けば解雇できますか A. 日数だけで一律に決まりません。就業規則、欠勤理由、連絡・督促の経過、業務への影響、本人の説明などを確認します。 Q. 本人が通知を受け取らない場合はどうしますか A. 返送理由を保存し、登録住所、メール等の連絡手段、これまでの応答状況を踏まえて次の方法を検討します。発送しただけで全手続が完了したとは限りません。 Q. 大阪以外の会社も相談できますか A. 大阪の会社をはじめ、対応地域やオンライン相談の可否は個別に案内します。 Q. 顧問契約をしていなくても相談できますか A. 相談できます。今回の通知書のみの点検と、就業規則・継続指導を含む支援のどちらが合うかを確認できます。 無断欠勤対応を、解雇通知だけで終わらせないために この通知を出す前の点検から、継続する注意指導・就業規則・再発予防まで支援します。 会社側の労務相談をする 継続支援の内容を見る ※本記事は一般的な情報提供を目的とするもので、個別案件についての法的判断を示すものではありません。 会社側・使用者側で対応 いま「解雇の判断」の段階の方へ|次に読むべきページ → 同じ段階の解説:就業規則がない会社のリスクと解雇無効判決の実例→ 依頼を検討する:問題社員対応を弁護士に依頼すると何が変わるか→ 問題社員対応の特化ページ(タイプ別の対応・解決事例・費用) 会社側の問題社員対応チェックリストを確認する