「このクレームは正当なのか、それとも過剰なのか」——社長として、この判断が一番難しいと感じていませんか。 権利を主張してくる相手が現れたとき、最初に感じるのは「どこまで対応すべきか」という戸惑いです。正当な要求であれば誠実に応じなければならない。しかし、度を超えた要求であれば毅然と断る必要がある。この線引きが、感情論ではなく、会社を守る判断として機能しているかどうかが問われています。 本記事では、権利を主張してくる人の行動パターンを整理したうえで、「正当な要求」と「不当な要求」を見分けるための視点と、会社として取るべき対応の流れを具体的に解説します。 権利を主張する人の特徴——どんな行動パターンがあるか 権利を主張する人は、大きく2つのタイプに分けて考えると判断しやすくなります。 ①正当な権利を持っているが、主張の仕方が強硬なタイプ このタイプは、法的に根拠のある請求を持っています。ただし、感情的に強く主張したり、複数の窓口に同時にアクセスしたり、SNSでの拡散をほのめかすなど、「圧力をかけて早期解決を求める」傾向があります。 特徴としては以下のようなものがあります。 法律の条文や判例を調べて持ち込んでくる 「弁護士に依頼する」「消費者センターに相談する」と言う 書面や録音など証拠を自ら用意している 要求が具体的な金額・期日で示されている このタイプへの対応を誤ると、正当な権利を侵害したとして、かえって会社が不利な立場に立たされます。 ②正当な根拠が薄い、または根拠のない要求を強引に通そうとするタイプ このタイプは、法的根拠よりも「圧力」で相手を動かそうとします。担当者を疲弊させることで要求を通そうとするケースも多く、長期化すると現場が消耗します。 長時間のクレーム電話や来店を繰り返す 要求内容が変化し、対応するたびに新たな主張が出てくる 「謝罪しろ」「責任者を出せ」を繰り返すが、具体的な解決策を受け入れない 根拠を問うと感情的になり、論理的な対話が成立しない このタイプへの対応は、毅然と線引きをすることが最大の防御です。しかし、「どこで断ればいいのか」の判断が難しいため、現場が曖昧な対応を続け、問題が長期化するケースがほとんどです。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) なぜ判断ミスが起きるのか——社長が陥りやすい思考の罠 【図解】権利を主張する人の特徴——どんな行動パタへの対応フロー ① 問題発生 → ② 事実確認・記録 → ③ 顧問弁護士に相談 → ④ 対応策の実行 ※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。 権利を主張する相手への対応で、会社側が判断ミスを犯すとき、その構造にはほぼ共通点があります。 「とりあえず謝っておけば収まるだろう」という発想が、もっとも多い判断ミスです。誠意を示すことは大切ですが、事実確認が終わっていない段階での謝罪は、法的に会社の非を認めたと解釈されるリスクがあります。その後に「やっぱり弊社に非はなかった」と訂正しようとしても、相手はすでに「認めた」という証拠を手にしています。 「少額なら払ってしまったほうが早い」という発想も危険です。一度払うことで、相手が「次も通じる」と学習し、繰り返しクレームが来るケースがあります。また、根拠のない支払いが社内で慣例化すると、後から別の相手への対応の際に「あのとき払ったのになぜ今回は払わないのか」という問題に発展します。 「現場に任せておけばいい」という発想も問題です。担当者は「揉め事を収める」ことを第一に考えますが、それは会社のリスク管理とは必ずしも一致しません。現場での対応が、後から見ると重大な言質を与えていたというケースは少なくありません。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 問題が起きる前にできること——予防的な整備のポイント 権利を主張する人が現れてから動くのでは、常に後手に回ります。問題が起きる前に、会社として「線引きの基準」と「対応ルール」を作っておくことが重要です。 クレーム対応規程を文書化する 「どこまでの要求に応じるか」「どの段階で弁護士に相談するか」「誰が窓口を引き取るか」をあらかじめ明文化しておきます。現場が迷わず動けるルールがあることで、過剰な対応も、不十分な対応も防げます。 従業員への対応研修を実施する クレーム対応の現場では、担当者がパニックになって余計なことを言ってしまうことがあります。「言ってはいけないこと」「確認してから答えること」を事前に共有しておくだけで、ミスは大幅に減ります。 顧問弁護士の予防的な活用 顧問弁護士は、揉めてから動かすものではありません。クレーム対応規程のチェック、契約書の見直し、従業員研修の同席など、問題が起きる前の段階から会社の対応力を底上げするために使うものです。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 問題発生時の対応フロー——証拠の残し方を具体的に 権利を主張する相手が現れたとき、会社として最初にすべきことは「事実の確認と記録」です。感情的な対応の前に、まず証拠を積み上げることを優先してください。 ステップ1:記録を始める 相手からの連絡が来た時点から、記録を開始します。日時、対応した担当者、相手の発言内容、要求の内容を文書化します。電話の場合は「折り返し確認します」と一度保留にしたうえで内容をメモに残す習慣をつけてください。 ステップ2:要求の根拠を書面で確認する 「どのような根拠に基づく要求なのか」を書面で提出してもらうよう求めます。口頭だけでの要求は記録が残りにくく、後から内容が変わるリスクがあります。「書面でご提出いただいた内容をもとに確認します」という対応は、相手に対して高圧的に見えず、かつ会社の記録も作れる有効な方法です。 ステップ3:社内での事実確認を行う 相手の主張が正しいかどうかを、社内の記録・証拠(取引記録、メール、契約書、録音など)をもとに確認します。「会社側に非があるかどうか」をこの段階で整理することで、以降の対応方針が決まります。 ステップ4:弁護士に相談するタイミングを決める 「要求が具体的な金額を伴っている」「弁護士を立てると言われた」「長期化の兆候がある」——このいずれかが当てはまった時点で、弁護士への相談を検討してください。早い段階で相談することで、対応の方向性を誤る前に修正できます。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 失敗事例の構造——なぜ相談が遅れ、なぜ証拠がなかったのか 「もっと早く相談していれば」という後悔の声は、法律相談の現場では非常によく聞きます。なぜ相談が遅れるのか、その構造を整理します。 「まだそこまでではない」という判断が続く クレームや権利の主張は、最初は小さな問題として始まります。「今回だけは対応しよう」「次は断ろう」という繰り返しの中で、相手の要求水準が上がり、気づいたときには会社が相当の不利益を被っている——というケースが典型的です。 対応の記録を誰も取っていなかった 紛争になってから急に証拠を作ることはできません。「あのとき確かにこう言った」という記憶は、相手も自分も都合よく書き換えられています。問題が顕在化してから記録を集めようとすると、重要なやり取りがすでに失われているケースがほとんどです。 証拠は、紛争になってから急に作れるものではありません。日常業務の中で自然に記録が残る仕組みを作っておくことが、最も確実な防御策です。 「弁護士に頼むほどではない」という思い込み 弁護士への相談は、「大きな問題になってから依頼するもの」というイメージが根強くあります。しかし実際には、早い段階で相談することで対応の誤りを防ぎ、結果として費用も時間も抑えられるケースが多い。相談のハードルを下げることが、会社全体のリスクを下げることに直結します。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) うちの会社ではどう考えればいいのか——判断基準の整理 権利を主張してくる人への対応は、「正当か不当か」だけで判断しようとするから難しくなります。実際には、以下の3つの軸で考えると整理しやすくなります。 軸①:法的根拠があるかどうか 相手の主張が法律上根拠のあるものであれば、正面から向き合う必要があります。しかし、感情的な主張や曖昧な根拠だけであれば、毅然と対応する余地があります。この判断は、弁護士に確認するのが最も早い方法です。 軸②:会社側に非があるかどうか 会社側に落ち度があった場合は、それを認めたうえで誠実に対応することが最善です。ただし、「認める範囲」を明確にしておかないと、余計な責任まで引き受けることになります。 軸③:対応コストと解決コストのバランス 「払ったほうが早い」という判断は、短期的にはそうかもしれません。しかし、長期的に見ると慣例化・繰り返しのリスクがあります。一方、徹底的に争うことが会社の体力を奪うケースもあります。この判断は感覚ではなく、弁護士と一緒に試算して決めてください。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 再発防止策——「次に備える」体制の作り方 一度対応を終えた後に、何も変えなければ同じ問題は繰り返されます。再発防止策は、以下の3点を中心に整備してください。 対応事例の社内共有:どのような要求があり、どう対応し、どう解決したかを社内ナレッジとして蓄積します。担当者が変わっても対応の質が落ちない仕組みを作ります。 規程・マニュアルの見直し:実際の対応を踏まえて、クレーム対応規程や就業規則を定期的に見直します。現場で使えないルールは機能しません。 定期的な弁護士チェックの仕組み化:問題が起きてからではなく、定期的に弁護士と会社の状況を確認する機会を設けます。「法務ドック」として会社の法務リスクの健康診断を受ける感覚で活用することが有効です。 クレーム対応や権利主張への対処は、一件ずつスポット的に対応していても根本的な解決にはなりません。重要なのは、クレーム対応規程を就業規則に組み込み、現場が迷わず動ける体制を整えること、そして困ったときにすぐ相談できる顧問弁護士という「みんなの法務部」を社内に持つことです。弁護士法人ブライトでは、顧問先142社の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の弁護士が、条項整備から現場の初動相談まで継続して対応しています。揉めてから弁護士を使うのではなく、揉めないように弁護士を使う体制が、もっとも確実なリスク管理です。 よくある質問 Q. 相手が「弁護士を立てる」と言ってきました。どう対応すればいいですか? A. 相手が弁護士を立てると言った段階で、こちらも弁護士への相談を検討すべきタイミングです。弁護士同士のやり取りになると、感情的な対立が整理され、法的根拠に基づいた交渉が可能になります。この段階でこちらが弁護士なしで交渉を続けると、不利な合意をしてしまうリスクが高まります。 Q. クレームの段階では録音してもいいですか? A. 自分が当事者として参加している会話の録音は、日本の法律上、原則として違法にはなりません(相手の同意は不要です)。ただし、録音の目的や使用方法によってはトラブルになるケースもあるため、弁護士に確認したうえで対応方針を決めることをおすすめします。 Q. 根拠のないクレームを繰り返す相手に、会社として何ができますか? A. 根拠のないクレームの繰り返しは、状況によっては不当要求・威力業務妨害・ストーカー規制法上の問題として法的対応が可能です。また、内容証明郵便による警告や、接触禁止の仮処分申請なども手段として検討できます。一人で抱え込まず、早めに弁護士に相談することが重要です。 Q. 顧問弁護士がいない場合、どのタイミングで弁護士に相談すればいいですか? A. 「要求が金銭的な請求に発展した」「書面が届いた」「対応が長期化している」のいずれかが当てはまった段階で相談を検討してください。ただし、もっとも効果的なのは、問題が小さいうちに顧問弁護士に相談し、対応の方向性を決めておくことです。問題が大きくなってからの相談は、選択肢が狭まっている場合があります。 当事務所が参考にした実務書 当事務所では本テーマに関する最新の実務書を継続的に確認し、顧問先企業のリスク評価に反映しています。本記事の作成にあたり特に参考にした書籍を以下に紹介します。 『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』 — 厚生労働省/2022年/分類:公的機関のガイドライン・Q&A 『不当要求・悪質クレームへの法的対応の実務』 — 弁護士法人東京国際法律事務所編/民事法研究会/2019年/分類:Q&A形式の実務解説書 『企業のためのカスハラ・悪質クレーム対応マニュアル』 — 向井蘭著/労務行政/2023年/分類:マニュアル・チェックリスト型 『問題社員・モンスター社員への法的対応の実務』 — 岸田鑑彦著/日本法令/2022年/分類:Q&A形式の実務解説書 『労働問題の法律相談』 — 東京弁護士会労働法制特別委員会編/学陽書房/2021年/分類:Q&A形式の実務解説書 ※ 書籍内容は引用しておらず、書誌情報のみ表示しています。本記事は弁護士法人ブライトが監修・執筆しています。 この記事の監修者 和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士 大阪弁護士会/大阪大学法学部卒 専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生 権利の主張・クレーム対応・問題社員・解雇など経営上の課題を継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先142社の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:06-4965-9590(平日9:00〜18:00) 「みんなの法務部」というブライトの考え方 中小企業の社長に「専属の法務部」を持っていただく——これがブライトの顧問サービスの基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、契約書・労務・債権回収・M&Aまで日常的に相談できる体制を、月額固定で。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、142社の顧問先と向き合っています。 ▶ みんなの法務部とは(詳しく見る) 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 関連記事 「義務を果たさず権利を主張する」社員への対応で会社が判断を誤る理由と実務的な考え方 権利ばかり主張する社員への対応|解雇より前にやるべきこと