既存SaaSを参考にAIで自社ツールを作るのは違法?規約・著作権・不競法の線引き

既存SaaSを参考にAIで自社ツールを作るのは違法?規約・著作権・不競法の線引き

和氣 良浩

監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会

大阪で中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。生成AIの業務活用や契約・利用規約の確認を、会社の実務に合わせて支援している。

「いま使っているSaaSの機能を生成AIに読ませて、似たような社内ツールを作れないか」。生成AIでソフトウェア開発のハードルが下がり、こうした発想を持つ経営者は増えています。ところが社内で口にすると、従業員から「それはリバースエンジニアリングで、利用規約違反ではないですか」と止められることがあります。

結論から言うと、自社の中で使う道具として作るのか、それとも自社がお客様に売る製品に組み込むのか、そして何を材料にして作るのかで、リスクの大きさは大きく変わります。公開されている製品紹介やヘルプを手がかりに、自社の業務フローから要件を起こして社内で使うだけであれば、契約違反の問題は生じにくいと考えられます(ただし規約の文言次第です)。一方で、ログインした画面を網羅的にAIへ読ませたり、コードを入手して解析したり、作ったものを販売したりする場合は、利用規約の文言次第で問題になり得ます。

この記事では、利用規約(契約)・著作権・不正競争防止法・顧客データの四つの観点から線引きを整理し、従業員にも説明がつく安全な進め方をまとめます。弁護士法人ブライトは、生成AIで会社を伸ばそうとする経営者を「止める法務」ではなく「安全に進めるための法務」で支える立場から解説します。

AIで自社ツールを作る前に、規約と進め方を確認しませんか

弁護士法人ブライトは、法務部がない会社の「外部法務部」。顧問より一歩、会社の中に入って伴走します。顧問先142社、企業法務部の弁護士は弁護士歴平均14年以上。生成AIを使って会社を伸ばすための確認を、大阪から支援します。

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結論の早見表|「誰が使うか」×「何を材料にするか」でリスクが変わる

まず全体像です。縦軸に「何を材料にして作るか」、横軸に「作ったものを誰が使うか」をとると、リスクの目安は次のように整理できます。あくまで一般的な傾向であり、最終的には利用しているSaaSの利用規約の文言で判断が変わる点にご注意ください。

材料・作り方 社内で使うだけ 自社の製品・サービスとして売る
公開情報から作る
(製品紹介ページ・公開ヘルプ・公開資料と、自社の業務フロー)
リスクは比較的低い
アイデアや機能の考え方そのものは原則として保護されない。規約の禁止条項に当たらないかは確認する
注意
「競合製品の開発目的」条項、名称・ロゴ・画面の見た目の類似(不正競争防止法)に気を配る
ログインした画面を網羅的に解析する
(全画面をスクリーンショットしてAIに読ませ、設計を写し取る)
注意
規約の「解析禁止」「目的外利用」「秘密保持」条項に当たり得る。画面に映った顧客データの扱いも問題になる
リスクが高い
「競合製品・類似サービス開発目的の利用禁止」に正面から当たりやすい。損害賠償請求の火種になり得る
コードを入手・逆コンパイルする
(配布物やブラウザ上のプログラムを解析し、ロジックを抜き出す)
リスクが高い
多くの規約が明示的に禁止している。コードを複製すれば著作権の問題も生じ得る
リスクが高い
規約違反・著作権・営業秘密の問題が重なり得る。着手前に弁護士確認を

表のとおり、いちばん安全側に寄せやすいのは「公開情報+自社の業務フローから要件を起こし、社内で使う」パターンです。逆に、社内利用であっても「ログイン画面を隅々までAIに読ませる」「コードを解析する」といった作り方を選ぶと、リスクは一段上がります。「誰が使うか」と「何を材料にするか」は別々のつまみだと考えると、社内で議論しやすくなります。

自社のケースがどの欄に当たるか、弁護士と一緒に確認できます

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なぜ「社内利用」と「販売」で分かれるのか

SaaSの利用規約でよく見る禁止条項の一つが「当社サービスと競合する製品・サービスを開発する目的での利用の禁止」です。この条項が典型的に想定しているのは、SaaSの機能や設計を写し取って、自社の製品として市場で売る行為です。自社の業務を回すための社内ツールは、市場で顧客を奪い合う関係にはなりにくいため、こうした条項に直ちに当たるとは限らないと考えられます。

ただし、規約の書き方は会社ごとに違います。「競合する製品の開発」とだけ書かれていて、販売の有無を問わない文言もあります。この場合、利用をやめて置き換えるための代替ツールづくりが「競合製品の開発」に含まれると読む余地もゼロではありません。社内利用だから大丈夫と決めつけず、必ず文言を確認するのが出発点です。

利用規約は契約|よくある禁止条項と違反したときの効果

SaaSの利用規約は、申込みや利用開始の手続を通じて契約の内容になるのが通常です。不特定多数を相手に画一的に提供されるサービスの規約は、民法の「定型約款」の規定によって契約内容になると整理されることが多く、「読んでいないから関係ない」とは言いにくいのが実情です。なお、個別に申込書や契約書を取り交わしている場合は、その契約書の条項が優先して問題になることもあります。利用規約一般の考え方は、SaaS利用規約で社長が知っておくべき落とし穴もあわせてご覧ください。

よくある禁止条項の型

特定の会社の規約ではなく、SaaSの利用規約でよく見られる条項を型として整理すると、次のとおりです。

条項の型 よくある書き方の例(抽象化) AIで自社ツールを作るときの関係
リバースエンジニアリング等の禁止 本サービスのソフトウェアを逆コンパイル、逆アセンブル、リバースエンジニアリングその他の方法で解析すること コードの入手・解析は正面から当たりやすい。画面の網羅的な解析が「その他の方法による解析」に含まれるかは文言次第
競合製品・類似サービスの開発目的の禁止 本サービスと競合する、または類似する製品・サービスを開発する目的で本サービスを利用すること 販売目的なら当たりやすい。社内利用は直ちには当たらないことが多いが、書き方によっては含まれ得る
スクレイピング・自動取得の禁止 ロボット、スクレイピングツール等の自動化された手段で本サービスにアクセスし、情報を取得すること 画面を自動で巡回して大量に取得し、AIに渡す作り方は当たり得る
ベンチマーク結果の公表禁止 本サービスの性能・機能を評価した結果を当社の承諾なく公表すること 比較記事や営業資料で比較表を出すときに関係する
秘密保持・非公開情報の取扱い 本サービスに関して当社が開示した非公開の情報を第三者に開示・漏えいしないこと ログイン後にしか見られない資料・画面を外部のAIサービスに入力する行為が問題になり得る

ここで大切なのは、画面を見て使うこと自体は「利用」の範囲だという点です。日々の業務でSaaSを操作し、使い勝手の良し悪しを感じることまで規約違反になるわけではありません。問題になりやすいのは、その範囲を超えて、全画面を網羅的に記録してAIに読ませ、設計を写し取ろうとする行為です。これが禁止条項のどれかに当たるかは、規約の具体的な文言で判断が分かれます。

違反した場合に起こり得ること

利用規約に違反した場合に想定されるのは、主に次の三つです。

  • アカウントの停止・契約の解除:多くの規約は、禁止行為があった場合に事前の通知なく利用を停止できる、と定めています。業務で使っているSaaSが突然止まること自体が、会社にとって大きな損失になり得ます。
  • 損害賠償の請求:契約違反(債務不履行)を理由とする損害賠償請求の可能性があります。実際にいくらの損害が生じたかを提供会社が立証するのは容易ではないことも多いのですが、ゼロではありません。規約に違約金や損害額の定めがあれば、なおさら注意が必要です。
  • 差止めの請求・取引関係への影響:作ったツールの利用や提供をやめるよう求められる可能性があります。販売している場合は、自社の顧客にまで影響が及びます。

⚖️ 利用規約に関する法律上のポイント

  • 規約が契約内容になる仕組み:定型取引で、定型約款を契約の内容とする旨の合意や事前の表示があれば、個別の条項にも合意したものとみなされる(ただし相手方の権利を制限し、または義務を重くする条項のうち、信義則に反して相手方の利益を一方的に害するものは、合意しなかったものとみなされる)
  • 違反の効果:契約上の義務に違反すれば、債務不履行に基づく損害賠償や契約解除の対象になり得る

根拠条文:民法548条の2、415条、541条・542条

「競合目的」の条項は文言を一語ずつ読む

同じ「競合禁止」でも、確認すべき言葉は少なくありません。「競合する」だけなのか「類似する」まで含むのか、「開発」だけなのか「提供・販売」に限るのか、「目的で利用」なのか「利用して得た情報を用いて」なのか。こうした一語の違いで、社内ツールが含まれるかどうかの読み方が変わります。迷ったときは、条項のスクリーンショットと確認日を残し、どう読んだかを社内で記録しておくことが、後で説明責任を果たすうえで役立ちます。

著作権|アイデアや機能は守られないが、コードや画面の丸写しは別問題

次に著作権です。結論として、SaaSの「アイデア」「機能」「業務の流れ」そのものは、著作権では原則として保護されません。著作権が守るのは具体的な「表現」であり、「顧客ごとに商談の進み具合を管理する」「メールの開封を記録して次の連絡を促す」といった発想や仕組みは、著作権の観点では誰が実装してもよいのが原則です。ただし、その仕組みについて特許権が取得されている場合は別に問題になり得るため、特に外販する場合は特許の有無も確認しておくと安心です。

プログラムは著作物だが、言語・規約・解法は保護されない

著作権法は、プログラムを著作物の一つとして明記しています。一方で、プログラムを書くための言語、プログラムの書き方の約束事(規約)、問題を解く手順(解法、いわゆるアルゴリズム)には、著作権の保護が及ばないと定めています。つまり、同じ機能を自社でゼロから書き起こすこと自体は、著作権の問題にはなりにくい構造です。

⚖️ 著作権法の基本的な枠組み

  • プログラムの著作物:プログラムは著作物の例として挙げられている
  • 保護が及ばないもの:プログラムの著作物に対する保護は、その作成に用いるプログラム言語、規約、解法には及ばない
  • 情報解析等の利用:著作物に表現された思想・感情の享受を目的としない利用は、必要と認められる限度で認められる(ただし著作権者の利益を不当に害する場合は除かれる)

根拠条文:著作権法10条1項9号、10条3項、30条の4

問題になるのは「表現」を写した場合

反対に、著作権の問題が生じ得るのは次のような場合です。

  • コードそのものの複製:入手したソースコードを書き写したり、AIに読ませて実質的に同じコードを出力させて使ったりする場合
  • 画面デザインの丸写し:レイアウト、配色、イラスト、アイコン、文章まで含めて、見た目をそっくり再現する場合
  • ヘルプやマニュアルの文章の転載:説明文をそのまま自社ツールのヘルプに流用する場合

画面(UI)そのものの著作物性については、操作性や機能を優先して作られる画面は創作性が認められにくく、一般に保護は認められにくいと考えられています。ただ、デザインに工夫があり創作性があると評価されれば、保護される可能性は残ります。「画面は著作物ではないから自由に真似してよい」とは言い切れないため、見た目は自社の業務に合わせて作り直すのが無難です。

「情報解析」の規定があっても、規約の問題は別に残る

著作権法には、著作物を鑑賞などの「享受」を目的とせずに利用する場合の規定(30条の4)があり、文化庁の解説資料(デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方)では、プログラムのリバース・エンジニアリングもこの規定の対象となり得ると整理されています。しかし、この規定の適用には条件があり、個別の事情によって判断が変わるため、当てはまるかどうかを一律に言うことはできません。さらに重要なのは、著作権法上許される余地があることと、利用規約(契約)で禁止されていることは別の問題だという点です。著作権の問題をクリアできても、規約で解析を禁じていれば契約違反の問題は残ります。

生成AIの出力物と著作権の関係は、生成AIの業務利用と著作権侵害リスクで、外部に開発を委託する場合の権利の帰属は生成AIを使った受託開発と著作権で詳しく解説しています。

作り方が著作権・規約のどちらに触れそうか、整理をお手伝いします

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不正競争防止法|営業秘密と「似せすぎ」に注意

三つ目の観点が不正競争防止法です。SaaSを参考にした自社ツールづくりで関係しやすいのは、営業秘密の取扱いと、名称・表示などの混同の二つです。

営業秘密の3要件と、公開情報の位置づけ

不正競争防止法で保護される「営業秘密」に当たるには、次の三つの要件をすべて満たす必要があります。

要件 意味 SaaSの情報に当てはめると
秘密管理性 秘密として管理されていること 誰でも見られる製品紹介・公開ヘルプは、秘密として管理されているとはいいにくい
有用性 事業活動に有用な技術上・営業上の情報であること 設計資料や内部の仕様は有用性が認められやすい
非公知性 公然と知られていないこと 公開ページに載っている機能説明は、非公知とはいいにくい

このため、公開されている画面やヘルプの情報は、営業秘密になりにくいと考えられます。一方、ログインした利用者だけに配られる非公開の資料、パートナー向けの限定資料、守秘義務を負って受け取った設計情報などは、別に考える必要があります。これらを使って製品を作る場合、規約上の秘密保持義務に加え、不正競争防止法の問題が生じる可能性もあります。また、ID・パスワード等で管理しながら、業として特定の利用者に提供されている相当量のデータ(限定提供データ)を、不正な手段で取得したり、提供を受けた者が不正な利益を得る目的などで使ったりする場合には、限定提供データの規定が問題になることもあります。

⚖️ 不正競争防止法で確認しておきたい規定

  • 営業秘密の定義:秘密として管理されている、事業活動に有用な技術上または営業上の情報で、公然と知られていないもの
  • 混同を生じさせる行為:他人の商品等表示として広く知られているものと同一・類似の表示を使い、他人の商品・営業と混同を生じさせる行為
  • 商品形態の模倣:他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為。令和5年改正(令和6年4月施行)で、電気通信回線を通じて提供する行為も規制対象に加えられた。保護は日本で最初に販売された日から3年間に限られ、機能を確保するために不可欠な形態は除かれる

根拠条文:不正競争防止法2条6項、2条1項1号、2条1項3号、2条7項

販売するなら名称・ロゴ・見た目の「混同」に気をつける

作ったツールを自社の製品として売る場合は、名称・ロゴ・アイコン・画面の見た目が、参考にしたSaaSと紛らわしくならないよう注意が必要です。よく知られた製品と混同を生じさせるような表示を使うと、不正競争防止法上の問題になり得ます。また、商品形態の模倣の規定は令和5年改正でネット経由の提供にも及ぶことになりましたが、ソフトウェアの画面が法律上の「商品の形態」に当たるかどうかは事案によるとされ、議論があるところです。社内利用であれば混同の問題は生じにくいものの、将来の外販を視野に入れているなら、最初から独自の名称とデザインで作っておくほうが後の手戻りを防げます。

個人情報・顧客データ|画面に映ったままAIに見せない

実務で最も事故につながりやすいのが、この観点です。SFAやCRM、マーケティングツールのログイン画面には、取引先の担当者名、メールアドレス、商談の内容、問い合わせ履歴など、顧客の個人情報や取引情報が表示されています。この状態のまま画面を撮影して生成AIに読ませると、ツールの設計を参考にするつもりが、顧客データを外部サービスに入力してしまうことになります。

なぜ問題になるのか

個人情報保護委員会は、生成AIサービスに個人情報を入力する場合、特定した利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認すること、また本人の同意なく個人データを入力し、それが応答結果の出力以外の目的で扱われると個人情報保護法違反となる可能性があるため、入力したデータが機械学習に使われないこと等を確認することを求めています(2023年6月2日・個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」)。さらに、取引先とのNDAや基本契約で、受け取った情報の利用範囲が決められていることもあります。詳しくは生成AIに顧客情報を入力してよいかと秘密保持契約がある資料を生成AIに入力できるかで解説しています。

現場でできる対策

  • 画面を参考にする場合は、テスト用の架空データだけが表示された状態にする
  • どうしても実画面を使うなら、氏名・連絡先・金額・取引先名などをマスクしてから扱う
  • 入力先のAIサービスについて、法人向けプランか、入力内容が学習に使われない設定かを確認する
  • 誰が、どの画面を、どのAIに入力したかを記録に残す

従業員が個人の判断でAIサービスを使っている状態が気になる場合は、従業員の生成AI無断利用(シャドーAI)への対応も参考になります。

安全な進め方|着手前に決めておきたい6つの手順

ここまでの整理を踏まえ、既存SaaSを参考にAIで自社ツールを作るときの進め方を、6つの手順にまとめました。この手順をそのまま社内ルールにしておけば、従業員から疑問が出たときにも「この手順で進めている」と説明できます。

1

規約の禁止条項を確認して記録する

利用中のSaaSの規約から、解析禁止・競合目的の利用禁止・自動取得禁止・秘密保持の各条項を抜き出し、条文の写しと確認日を残す。

▼
2

要件は自社の業務フローと公開情報から起こす

「自社の業務で何に困っているか」を出発点に、製品紹介ページや公開ヘルプで機能の考え方を確認しながら要件を書く。

▼
3

ログイン画面の網羅解析・コードの入手はしない

全画面をスクリーンショットしてAIに読ませる、ブラウザ上のプログラムを解析する、といった作り方は選ばない。

▼
4

UI・名称・アイコンを似せない

画面のレイアウトや色づかい、名称、アイコンは自社の業務に合わせて独自に作る。ヘルプの文章も転載しない。

▼
5

顧客データはマスクする

AIに見せる画面や資料に、顧客の氏名・連絡先・取引内容が含まれないようにする。テスト用データの利用を基本にする。

▼
6

売る予定があるなら着手前に弁護士に確認する

外販・顧客への提供・既存製品への組込みを予定しているなら、設計に入る前に規約と知的財産(著作権・特許・商標等)の確認を受ける。

外部の開発会社やフリーランスに頼む場合

AIを使った開発を外部に委託する場合は、委託先が上の手順を守るよう契約で手当てしておくことが大切です。「第三者の権利を侵害しないこと」「参考にしたサービスの非公開情報を使わないこと」「顧客データを生成AIに入力しないこと」などを業務委託契約に盛り込み、成果物の権利の帰属も決めておきましょう。社内規程の整え方は生成AIの社内規程ひな型の落とし穴が参考になります。

弁護士に相談すべきタイミング

次のいずれかに当てはまる場合は、着手前に弁護士に相談することをおすすめします。

こんなとき 相談をおすすめする理由
作ったツールを外販する、顧客に提供する予定がある 競合目的の条項、不正競争防止法の混同、著作権・特許の問題が重なりやすい
規約に「類似サービスの開発」「解析」など幅広い禁止条項がある 社内利用でも当たる読み方があり得るため、文言の解釈が必要
参考にしたい情報がログイン後の資料や限定公開の情報しかない 秘密保持義務や営業秘密の問題を個別に検討する必要がある
従業員や開発担当者から懸念が出ている 第三者の目で整理したほうが、社内の合意形成が早く進む

外販や規約の解釈に迷ったら、着手前にご相談ください

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「それって規約違反では?」と慎重な従業員にどう答えるか

冒頭の場面のように、社長が乗り気でも、従業員が「規約違反では」と慎重な姿勢を示すことは珍しくありません。ここで大切なのは、この慎重さを「抵抗」ではなく「真っ当な反応」として受け止めることです。

従業員の慎重さは真っ当である

従業員の立場で考えると、慎重になるのは自然です。自分が手を動かした結果、会社が規約違反を指摘されたら、責任を問われるのは自分かもしれません。しかも、ツールがうまくできて会社が得をしても、その果実が本人に大きく返ってくるわけではありません。リスクは自分に、リターンは会社にという構図であれば、「少しでもグレーなことは避けたい」と考えるのは至極もっともです。社長と従業員の間に温度差があるのは、どちらかがおかしいのではなく、立場が違うからです。

社長がルールと責任の所在をはっきりさせる

温度差を埋めるいちばんの方法は、社長が「どこまでなら進めてよいか」というルールと、「最終判断の責任は会社(社長)が持つ」という責任の所在を明示することです。たとえば、次のような伝え方が考えられます。

「指摘してくれてありがとう。ログイン画面を全部AIに読ませるやり方はやめる。公開されている製品紹介とヘルプ、それにうちの業務の流れから要件を作る。画面に顧客データが映ったものはAIに入れない。規約は確認して記録を残し、作ったものを外に売る話になったら、その前に弁護士に確認する。進めると決めた責任は私が持つ。」

このように、従業員の懸念を作り方の改善に反映させたうえで、判断の責任を社長が引き取ると、従業員は安心して手を動かせます。

判断を一人に背負わせない仕組みにする

生成AIの活用は、一度きりではなく繰り返し出てくるテーマです。そのたびに現場の一人がグレーかどうかを判断し、責任を背負う形では、慎重な人ほど動けなくなり、無頓着な人ほど危ない使い方をしてしまいます。前章の6つの手順を社内ルールとして文書にし、迷ったときの相談先(社内の担当者や外部の弁護士)を決めておけば、判断が個人に集中しません。生成AI活用の全体像はAIと法務の総合ガイドでも整理しています。

生成AIを使って会社を伸ばそうとする経営者の姿勢と、リスクに敏感な従業員の姿勢は、本来ぶつかり合うものではありません。安全に進めるための線引きを会社として示すことで、両方の強みを生かせます。

よくある質問

社内でしか使わないツールなら、SaaSの利用規約は気にしなくてよいですか?

気にしなくてよいとは言えません。「競合製品の開発目的の利用禁止」は販売を想定した条項であることが多く、社内利用は直ちには当たらないと考えられる場合もあるものの、「類似サービスの開発」のように広い文言の規約もあります。また、解析禁止や自動取得禁止の条項は、社内利用かどうかに関係なく適用され得ます。まず規約の禁止条項を確認し、確認した記録を残しておくことをおすすめします。

SaaSの画面を見て、同じ機能を自社で作るのは著作権侵害になりますか?

機能やアイデア、業務の流れそのものは著作権で原則として保護されず、プログラムの言語・規約・解法も保護が及ばないとされています(著作権法10条3項)。そのため、同じ機能をゼロから自社で作ること自体は、著作権の問題にはなりにくい構造です。ただし、その仕組みに特許権が取得されている場合は別の検討が必要です。また、コードを複製したり、画面デザインやヘルプの文章を丸写ししたりすれば、著作権の問題が生じ得ます。見た目や文章は独自に作るのが無難です。

ログインした画面のスクリーンショットを生成AIに読ませてもよいですか?

おすすめしません。規約の解析禁止や秘密保持の条項に当たる可能性があるうえ、画面に顧客の氏名や取引内容が映っていれば、顧客データを外部のAIサービスに入力することになります。要件は製品紹介ページや公開ヘルプと自社の業務フローから起こし、どうしても画面を参考にする場合は、テスト用の架空データだけが表示された状態にするなどの対策をとってください。

作ったツールを将来は他社に販売したい場合、何に気をつければよいですか?

販売する場合は、参考にしたSaaSの規約にある「競合製品・類似サービスの開発目的の利用禁止」に当たりやすくなります。加えて、名称・ロゴ・画面の見た目が紛らわしいと、不正競争防止法の問題も生じ得ます。設計に入る前に、規約と知的財産(著作権・特許・商標等)の確認を弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士法人ブライトでは、大阪を中心に、こうした事前確認を企業法務として支援しています。

従業員に「規約違反では」と言われたら、どう対応すればよいですか?

まず、慎重な指摘は真っ当なものとして受け止めてください。そのうえで、ログイン画面の網羅解析をやめて公開情報から作る、顧客データをAIに入れない、規約を確認して記録を残す、といった作り方の見直しを示し、最終判断の責任は会社が持つと明確にすると、従業員は安心して進められます。判断に迷う点は、外部の弁護士に確認してから進めるのが確実です。

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AIを安全に使って会社を伸ばすために|弁護士法人ブライトの支援

弁護士法人ブライトは、生成AIを活用して事業を伸ばそうとする経営者を応援しています。私たちの役割は、AIの利用を止めることではなく、安全に進めるための線引きと手順を、会社の実情に合わせて一緒に作ることです。

単発で確認したい場合は、生成AIの利用状況や規約・契約のずれを点検する生成AIの法務ドックをご用意しています。会社全体の法務の状態を点検したい場合は法務ドック診断もご利用いただけます。継続的に相談できる体制を整えたい場合は、顧問サービス(みんなの法務部プラン)で、法務部がない会社の外部法務部として日々の判断に伴走します。

大阪をはじめ、オンラインで全国の企業からのご相談にも対応しています。企業法務の情報は企業法務トップからご覧いただけます。

本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。
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