株主間契約(SHA:Shareholders Agreement)は、複数株主が共同経営する非公開会社・スタートアップ・JVで「経営方針の合意」「株式譲渡の制限」「出口戦略の準備」を契約レベルで固定するための重要なツールである。会社法と定款だけではカバーできない領域を補完する役割があり、ひな形のまま使うと事業成長フェーズで予期せぬ紛争を生む典型例も多い。SHAに必ず入れるべき必須条項と、各条項の設計ポイントを整理する。
この記事の結論
- SHAは「議決権行使」「取締役指名権」「譲渡制限」「先買権・タグアロング」「ドラッグアロング」「デッドロック解消」の6条項が必須
- VC調達では「みなし清算条項」「優先株式の取扱い」も追加。創業者vs投資家の利害調整が論点
- 定款で代替できない領域は「株式買取請求条項」「競業避止」「役員報酬」「情報開示権」。SHA固有の価値はここにある
SHAと定款・会社法の役割分担
株主間契約は会社法・定款と異なる役割を持つ。会社法は「会社」と「株主」の関係を規律する強行法規が中心で、定款は会社の基本ルールを定める。これに対しSHAは「株主間」の合意を契約として固定するもので、株主同士の権利義務を柔軟に設計できる強みがある。
- 会社法:株主総会・取締役会の権限、譲渡制限、株主の最低権利
- 定款:会社の基本構造、譲渡制限の有無、種類株式の内容
- SHA:株主間の議決権行使ルール、取締役指名権、出口戦略、紛争解決
SHAは契約なので、定款と異なり登記事項にならない。外部から見えない株主間ルールを作れる一方、対会社・対第三者には直接効力がない(株主同士の債務不履行責任は発生)。
SHAの必須6条項
必須条項
- 議決権行使合意:重要事項について株主間で事前合意した内容で議決権行使する義務
- 取締役指名権:株主A は取締役X名を指名できる、株主B は取締役Y名を指名できる、等の配分
- 株式譲渡制限:定款の譲渡制限を補完し、特定株主への譲渡禁止・先買権の発動条件を細かく設定
- 先買権・タグアロング:他株主が第三者に売却する際の先買権、またはタグアロング(共同売却権)
- ドラッグアロング:多数派株主が会社売却を決めた際、少数株主も同条件で売却を強制される条項
- デッドロック解消:株主間の意見対立で会社運営が停止した場合の解消手続き(コールアンドプット・ロシアンルーレット等)
VC調達で追加される条項(優先株式・みなし清算)
VCから資金調達するスタートアップのSHAは、創業者契約とは異なる条項が追加される。とくに重要なのが「みなし清算条項」と「優先株式の取扱い」である。
みなし清算条項
会社売却(M&A)が発生した際、優先株主に対し「優先分配」を実現するための条項。本来の清算手続きを経ずに、売却対価を優先株主→普通株主の順で分配する合意である。VC側は投資元本+利息分の優先回収を確保するため必ず要求する。
優先株式の取扱い(参加型/非参加型)
優先株主が優先分配を受けた後、残余財産にも参加するか(参加型)、優先分配のみで終わるか(非参加型)の設計。創業者にとって参加型は不利で、シリーズが進むほど交渉が硬直化する。
株主間契約・出資契約・JV契約でお困りの経営者様へ
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弁護士歴平均15年以上のチームで、M&A・スタートアップ法務・株主紛争を継続的に取り扱っています。
SHAでカバーすべき非典型条項
必須6条項以外にも、SHAでカバーすべき重要条項がある。これらは定款では設定できない領域で、SHA固有の価値を発揮する。
- 株式買取請求条項:株主が一定事由(重病・死亡・退職等)で株式を会社または他株主に買い取らせる条項
- 競業避止条項:株主が会社と競合する事業を行うことを制限
- 役員報酬の上限・賞与基準:少数株主の利益を守るため役員報酬の決定ルールを明文化
- 情報開示権:少数株主に対する財務情報・取締役会議事録の開示義務
- 非公開情報の保持義務:株主が経営参加で得た情報の社外持出禁止
- 準拠法・仲裁条項:日本法準拠/JCAA仲裁または特定地裁の専属管轄
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