NDAを作成・締結するときに「片務(一方向)NDA」と「双務(相互)NDA」のどちらを選ぶかは、ひな形を渡す前に決定する設計判断である。「自社が情報を出すから片務」「お互い出すから双務」という単純判定は実務では正しくないことがあり、立証可能性・管理コスト・交渉力という別の観点が判断軸になる。場面別の使い分けを整理する。
この記事の結論
- 「自社が情報を出すか」だけで判定しない。立証可能性と管理コストの両面で選ぶ
- M&A検討・業務提携・採用面接では双務NDAが標準。情報を出した形跡を双方に残すと違反立証が容易になる
- 外注・コンサル発注・取引先への情報提供では片務NDA。受領者側に管理義務を集中させて自社負担を減らす
片務NDA/双務NDAの基本的な違い
片務NDA(One-way NDA)は一方が情報を開示し、相手方のみが秘密保持義務を負う形式。双務NDA(Mutual NDA)は両当事者が相互に情報を開示し、双方が秘密保持義務を負う形式である。条項構造は似ているが、義務の主体・管理コスト・違反時の立証可能性に差が出る。
片務NDA/双務NDAの比較
- 義務主体:片務=受領者のみ/双務=両当事者
- 管理コスト:片務=開示者は自社情報の特定だけ/双務=双方が受領情報の管理体制を整える必要
- 違反時立証:片務=開示者の情報のみ/双務=双方の情報の出所を立証可能
- 交渉適合性:片務=発注者と受注者の関係/双務=対等な検討ステージの関係
双務NDAを選ぶべき4つの場面
形式上どちらか一方しか情報を出さない場合でも、双務NDAを選んだ方が立証や交渉で有利になる場面がある。実務的に双務を選ぶのは次の4ケースである。
① M&A検討段階
買主側はDDのため売主の財務・顧客・契約情報を受領するが、売主側も買主の事業計画・買収後の経営方針・PMI構想を聴取する。買収後に交渉決裂となったとき、買主が他社の買収検討に売主情報を流用しないよう双務NDAで縛る必要がある。
② 業務提携・JV検討
提携検討では両社の事業領域・顧客基盤・技術スタックを相互開示する。提携が成立しなくても両社が同業他社として競合する可能性が残るため、双方向の秘密保持義務が必要になる。
③ 採用面接で候補者の経歴・経験を詳細聴取する場合
役員クラス・専門職の採用面接では、候補者から前職の事業計画・顧客情報・技術ノウハウまで踏み込んで聴取することがある。候補者側に「前職情報を漏らすことが目的ではない」と説明する意味でも、双務NDAで会社側の事業情報も対象に含めると候補者の警戒を緩められる。
④ 立証戦略として双方向の情報フローを残したい場合
後日の漏えい紛争で「自社からも秘密情報を出していた」事実は、相手方が情報を流用するインセンティブの存在立証に役立つ。形式的には片務でよくても、戦略的に双務を選ぶ実務感覚がある。
NDA設計・契約交渉でお困りの経営者様へ
弁護士法人ブライトは、片務/双務NDAの選び分け・条項設計・交渉実務を伴走支援する「みんなの法務部」です。
弁護士歴平均15年以上のチームで、契約書レビュー・M&A・業務提携を継続的に取り扱っています。
片務NDAを選ぶべき場面(受領者集中型)
逆に、開示者が情報を一方的に出す関係性では片務NDAで管理コストを集中させる方が合理的である。
- 外注・業務委託の発注:発注者が業務情報を出し、受注者は受託業務遂行のみ。双務にすると受注者から出される情報の管理体制を発注者側で整える負担が増える
- コンサル契約での情報開示:クライアントが事業情報を開示し、コンサルが助言する関係。コンサル側の情報は方法論程度で対称性がない
- 取引先への顧客情報共有:販売代理店・配送業者に顧客情報を共有する場面。代理店側からは情報を受けないため片務で十分
- 採用初期段階の情報開示:役員クラスではない一般採用で、会社側の事業計画程度のみ開示する場面
双務NDAを片務に変更させる交渉テクニック
相手方から双務NDAのひな形を提示されたが、自社からは情報を出さない場面では、片務化を交渉する余地がある。
- 「本件の情報フローは一方向であり双務化は実態にそぐわない」と論理で押す
- 双務維持を主張されたら「自社から開示する情報の範囲を限定する条項」を追加(事前書面合意で範囲を確定)
- 双務維持の代替条件として「秘密保持期間の短縮」「対象情報の限定」「違反時のペナルティ条項の対称化」を引き出す
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