株式譲渡契約書(SPA: Share Purchase Agreement)はM&A取引の最終契約書として、売主・買主の権利義務を確定させる重要文書である。前提条件・表明保証・補償・誓約事項の4つのブロックで設計され、それぞれ売主・買主の利害が真逆になる。実務での交渉観点を整理する。
この記事の結論
- SPAの4ブロック=前提条件・表明保証・補償・誓約事項
- 売主は表明保証範囲を限定/補償上限を低く/誓約事項を緩く
- 買主は表明保証を広く/補償上限を高く/MAC条項で離脱権確保
SPAの基本構成
SPAは典型的に次の8つの構成要素を持つ。日本のM&A実務では英米法の影響を受けて発展してきたが、近年は日本独自の文言設計が定着している。
- 取引概要:譲渡対象株式・対価・支払方法
- クロージング:実行日・実行場所・実行手続
- 前提条件:クロージング実行のための充足条件
- 表明保証:売主・買主が相手方に保証する事実
- 誓約事項:契約締結からクロージングまで・クロージング後の義務
- 補償条項:表明保証違反時の損害補償
- 解除条項:MAC条項・前提条件不充足時の解除
- 一般条項:守秘・準拠法・管轄・通知
前提条件(CP: Conditions Precedent)
クロージング実行のために充足されるべき条件。買主側の典型的なCPは(1)表明保証の真実性継続、(2)誓約事項の遵守、(3)独占禁止法の届出受理、(4)重要契約の相手方同意、(5)DDで判明した重要事項の解消。
売主側のCPは(1)対価支払、(2)買主の表明保証真実性、(3)買主側の許認可取得など。
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売主の表明保証 典型項目
- 対象会社の適法な設立・存続
- 発行済株式の真実性
- 財務諸表の適正性
- 重要契約の効力・違反不存在
- 法令・許認可の遵守
- 労務・年金・税務の適正
- 知的財産権の保有・侵害不存在
- 係属訴訟・紛争の不存在
- 資産の適正・担保不存在
売主の防御策
「売主の知る限り」「売主が知り、かつ知るべきだった事実に限る」など、知識限定文言を入れて表明保証範囲を絞る。開示書(Disclosure Schedule)で例外事項を列挙し、表明保証違反のリスクを限定。
補償条項(Indemnification)
表明保証違反・誓約事項違反による損害の補償。実務的な設計:(1)補償上限(取引価格の20〜100%)、(2)補償下限(バスケット条項:1件50万円・累計500万円超等)、(3)補償期間(クロージング後1〜3年)、(4)税務・労務・環境は別期間(5〜10年)。
高額補償リスクへの対応として、エスクロー口座(取引価格の5〜10%を留保)またはRWI保険(表明保証保険)の活用が増えている。
MAC条項(Material Adverse Change)
契約締結後・クロージング前に「重大な悪影響」が対象会社に発生した場合、買主が契約解除できる条項。日本の判例では発動が困難で、実務的には「客観的・継続的な悪影響」を要件にすることが多い。
コロナ禍でMAC条項発動の主張が増えたが、判例上は厳格に解釈される傾向。買主側はMAC条項の文言を具体的にし、売主側は除外事由(業界全体の悪影響等)を明記しておく。
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