「業務委託契約」と銘打って人材を受け入れているが、実態が労働者派遣に近い――そんな状態で運用が続くと、労働者派遣法違反・労働基準法違反・社会保険料の遡及徴収など、発注側企業に重大なペナルティが科される。厚労省告示が定める偽装請負の判定基準を、実務リスクと是正手順とともに整理する。
この記事の結論
- 偽装請負の判定基準は厚労省告示第37号の5項目(業務遂行・労務管理・事業遂行)
- 違反すると労働者派遣法59条の罰則(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)+是正勧告
- SES契約・常駐型開発はとくに偽装請負化しやすい。発注側・受注側双方の実態整備が必要
厚労省告示37号の5判定基準
「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)は、業務委託(請負)が偽装請負と判定されないための実態要件を定める。要件は次の3カテゴリ・5基準である。
①業務の遂行に関する指示等を自ら行うこと
受注側(請負業者)が自社の労働者に対し業務遂行の指示を行うこと。発注側担当者が直接指示・命令を出していると偽装請負と判定される。
②労働時間等に関する指示等を自ら行うこと
始業終業時刻・休憩時間・休日等の管理を受注側が行うこと。発注側のタイムカード打刻、出社時刻管理は要注意。
③企業における秩序の維持・確保等のための指示等を自ら行うこと
服務規律・職場秩序の維持を受注側が行うこと。発注側の社内ルール(服装・席順・会議出席義務)を一律適用するのはリスク。
④請負代金が業務処理に要する経費を自ら計算する方式であること
報酬が「人月単価×人数」のみで算定される場合、業務処理ではなく労働力提供と評価される可能性がある。成果物・業務範囲ベースの算定に近づける。
⑤事業遂行を自らの責任と負担で行うこと
受注側が機材・設備・資材を自ら準備し、業務遂行のリスクを負うこと。発注側の機材・PC・席を借りているだけでは要件を満たさない。
発注側のペナルティ
- 労働者派遣法違反:1年以下の懲役または100万円以下の罰金(無許可派遣の受入)
- 労働契約申込みみなし制度:違反期間中の労働者から労働契約成立を主張される(労働者派遣法40条の6)
- 社会保険料の遡及徴収:実態が雇用と判定されると最大2年遡って保険料負担
- 労働基準監督署の是正勧告:労働時間・賃金・有給休暇の遡及対応
- 取引先・株主への信頼毀損:上場準備中の企業はとくに致命的
SES契約・常駐型開発で起きやすい典型例
システム開発業界のSES契約では、受注側エンジニアが発注側の事業所に常駐し、発注側のチームリーダーから日々の指示を受けながら作業するケースが多い。これは典型的な偽装請負化リスクである。
是正のポイントは①発注側からの指示は受注側のリーダー経由とする、②受注側が独立した執務スペースを確保する、③タイムカード等の労務管理は受注側が独自に行う、④朝会・終礼等の参加は任意とする、の4点。受注側に「現場リーダー」を必ず置き、発注側との指示伝達を一元化することが運用上の決定打になる。
業務委託の偽装請負リスク対応でお困りの経営者様へ
弁護士法人ブライトは、業務委託・SES契約の実態調査、契約書改定、現場運用の是正までを伴走支援します。
労働者派遣法・下請法・労働基準法を横断的に整理する「みんなの法務部」です。
是正手順(発注側)
- 現状の指示系統の棚卸し:誰から誰への指示が日常的に行われているか
- 業務委託先別のリスク評価:契約形式と実態のギャップを各社ごとに記録
- 是正計画の策定:契約改定(成果物ベース化)・指示経路の変更・物理的な作業場所の整理
- 段階的な切替え:労働者派遣契約への切替えか、業務委託の実態整備かを選択
- 関係者教育:現場マネージャーへの偽装請負防止研修
受注側が守るべきこと
- 現場リーダーの常駐配置(発注側との指示伝達を一元化)
- 労働時間管理を受注側で実施(独自のタイムカード・勤怠システム)
- 業務遂行に必要な機材を可能な限り自社で持ち込む
- 報酬体系を成果物・業務範囲ベースに近づける
- 発注側の社内ルール(朝会・服装規定)の自社適用は限定的に
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