M&A取引の補償条項は、表明保証違反時の損害請求の枠組みを定める。実際の補償実行を確実にするためにエスクロー口座が併用される。両者の設計を実務観点で整理する。
この記事の結論
- 補償条項の4要素=バスケット条項・補償上限・補償期間・補償手続
- エスクロー口座は取引価格の5〜10%を留保。補償期間と一致させる
- RWI(表明保証保険)と組み合わせるとエスクロー額を縮小可能
補償条項の4要素
①バスケット条項(Basket)
個別損害が一定額(個別バスケット50万〜100万円)または累計損害が一定額(累計バスケット500万〜2,000万円)を超えた場合に補償請求が可能になる。少額の表明保証違反による補償請求の頻発を防ぐ。
実務的な設計:(1)個別バスケット+累計バスケット併用、(2)累計バスケット超過時に全額補償(first dollar)または超過分のみ補償(excess only)の選択。
②補償上限(Cap)
補償上限は取引価格の20〜30%が標準。基本的事項(適法設立・株式所有権)は無制限とする例外あり。
③補償期間(Survival Period)
通常の表明保証:クロージング後12〜24ヶ月。税務・労務・環境:5〜10年。基本的事項:無期限(買主の追及権は時効消滅まで)。
④補償手続
通知期限(違反発見後30〜60日以内)、調査協力義務、第三者請求の防御負担、和解の事前承認など。
エスクロー口座の活用
エスクロー口座は、取引価格の一部を中立の第三者(信託銀行・エスクローエージェント)が保管し、補償期間経過後または補償請求合意後に売主・買主に分配される仕組み。
実務的な設計:(1)エスクロー金額は取引価格の5〜10%、(2)期間は通常の表明保証期間(12〜24ヶ月)と一致、(3)解除条件は両当事者の合意または仲裁判断、(4)エスクロー手数料は両当事者で按分。
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- 第一義的補償源:エスクロー口座から補償
- エスクロー超過時:売主への直接請求(補償上限まで)
- RWI併用時:エスクロー超過分を保険金でカバー
- エスクロー解除:補償期間満了時、未請求分は売主に返還
- 請求合意時:両当事者署名でエスクロー口座から買主へ送金
RWIとの組み合わせ
表明保証保険(RWI)を活用することで、(1)エスクロー金額を縮小(取引価格の1〜2%まで)、(2)売主の補償義務を実質ゼロ化、(3)クロージング後の紛争を回避、というメリットが得られる。
保険料は取引価格の0.5〜2%。中規模M&A(取引価格30〜100億円)で経済合理性が出始める。
補償請求の実務
- 違反発見:表明保証違反・誓約事項違反の認識
- 通知:契約上の通知期限内に書面通知
- 調査・協議:両当事者で事実関係・損害額を調査
- 合意または仲裁:合意できなければ仲裁・訴訟
- 支払い:エスクロー口座から、または売主から直接
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