M&A取引における表明保証は、売主が買主に対し対象会社・事業の事実を保証する条項である。範囲・期間・補償の枠組みで売主・買主の利害が真逆になる。実務的な設計と限界を整理する。
この記事の結論
- 表明保証は「事実の保証」。違反すれば違反時点での補償義務が生じる
- 売主防御=知識限定文言・開示書(Disclosure Schedule)・補償上限・補償期間限定
- 買主補強=DD結果の表明保証反映・MAC条項・表明保証保険(W&I/RWI)
表明保証の機能
表明保証(Representations and Warranties)は、売主が買主に対し、契約締結時およびクロージング時に対象会社・事業の事実を保証する条項。違反した場合、買主は補償条項に基づいて損害賠償または取引価格調整を請求できる。
DDだけでは把握しきれない事実(簿外債務・潜在的紛争・過去の労務違反等)について、売主の保証で補完する仕組み。買主の安心料、売主の取引対価の一部としての性格を持つ。
表明保証の典型項目
- 適法設立・存続・必要権利能力
- 発行済株式の真実性・所有権・担保不存在
- 財務諸表の適正・引当金の十分性
- 重要契約の効力・違反不存在・変更権の不存在
- 法令遵守・許認可保有
- 労務・社会保険・年金の適正
- 知的財産権の保有・第三者侵害不存在
- 訴訟・紛争・行政手続の不存在
- 資産の所有権・担保不存在
- 税務申告の適正・追徴リスク不存在
- 個人情報・データの適正管理
- 環境法令の遵守
- 反社会的勢力との非関連
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①知識限定文言
「売主の知る限り」(to the seller’s knowledge)、「売主の役員が現実に認識している事実に限り」など、表明保証の対象を売主側の認識に限定する文言。買主側は「合理的調査をすれば知り得たもの」までを含めるよう交渉する。
②開示書(Disclosure Schedule)
表明保証から除外する事項を列挙した別紙。「重要契約は変更権なし、ただし開示書D-3記載のものを除く」のように使う。買主はDD過程で発見した懸念事項を開示書から除外するよう交渉。
③補償上限
補償額の上限を取引価格の20〜100%に設定。M&A実務では取引価格の20〜30%が標準的。
④補償期間
通常の表明保証は1〜3年、税務・労務・環境は5〜10年と長期、所有権・基本事項は永久(買主による取得後も主張可能)。
買主の補強策
- DD結果の表明保証への反映:DDで発見した懸念点を表明保証で明示
- MAC条項:契約締結後の重大な悪影響発生時の解除権
- エスクロー口座:取引価格の5〜10%をエスクローに留保
- 表明保証保険(W&I/RWI):違反時の保険金で補償をカバー
- 連帯保証人の指定:売主が個人または小規模法人の場合
表明保証保険の活用
近年日本でも普及し始めた表明保証保険(W&I Insurance / RWI: Representations and Warranties Insurance)は、表明保証違反による買主の損害を保険金でカバーする保険。クロージング後の補償紛争を回避し、売主の補償義務を限定できるメリットがある。
保険料は取引価格の0.5〜2%程度。免責金額(保険対象から除外する金額)の設定が交渉ポイント。100億円超の取引で活用が増えている。
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