事業譲渡では、対象事業の従業員の労働契約は譲受会社に当然には承継されない。各従業員から個別同意を取得する必要がある。会社分割との違い、同意取得の実務手順、不同意者への対応を整理する。
この記事の結論
- 事業譲渡では従業員の労働契約は個別同意なしには承継されない
- 労働契約承継法は会社分割のみ適用。事業譲渡には適用されない
- 実務手順=事前説明会・個別面談・同意書取得・就業規則整合・労組協議
労働契約承継のルール
事業譲渡(個別同意必須)
事業譲渡では、譲渡会社と従業員の労働契約を譲受会社に承継させるには、各従業員の個別同意が必要。同意がない場合は譲渡会社に残ったままとなり、譲受会社の従業員にはならない。
会社分割(労働契約承継法適用)
会社分割では「労働契約承継法」が適用され、(1)分割対象事業に主として従事する労働者は当然に承継、(2)承継従事者以外で承継対象に挙げられた者は異議申立て可能、(3)労働組合との5要件協議が必要、という枠組みで処理される。
個別同意取得の実務手順
- 事業譲渡計画の社内公表:譲渡時期・譲受先・処遇方針の発表
- 従業員説明会:譲渡先の概要・労働条件・退職金・有給の取扱いを説明
- 個別面談:各従業員と1対1で意向確認・質疑応答
- 転籍同意書の取得:書面で個別同意を取得
- 就業規則・労働協約の整備:譲受会社の就業規則を譲渡会社並みに調整
- 退職金・有給休暇の処理:譲渡会社で精算 or 譲受会社で通算
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退職金
原則は譲渡会社で精算(譲渡会社退職→退職金支給→譲受会社入社)。譲渡会社の負担を軽減するため、退職金算定基礎勤続年数を譲受会社で通算する合意も実務上見られる。
有給休暇
譲渡会社の有給休暇残日数を譲受会社で引き継ぐかは個別合意による。引き継がない場合、譲渡会社で消化または金銭精算。
勤続年数の通算
勤続年数を通算するかは譲受会社の就業規則次第。通算する場合、退職金・有給日数・育児休業取得要件・定年等の判定で有利に扱われる。
不同意者への対応
個別同意を得られない従業員は譲渡会社に残るが、譲渡対象事業がなくなるため、(1)譲渡会社の他事業への配置転換、(2)整理解雇、(3)退職勧奨、のいずれかの対応が必要になる。
整理解雇には4要件(解雇必要性・回避努力・人選合理性・手続妥当性)の充足が必要。事業譲渡を理由とする一方的解雇は無効化リスクが高い。
労働組合との協議
労働組合がある場合、団体交渉応諾義務(労組法7条)に基づく事前協議が必要。協議事項は(1)譲渡条件、(2)従業員処遇、(3)労働協約の承継、(4)退職金・有給の取扱い、など。
労働協約は事業譲渡では当然には承継されない。譲受会社で同等の労働協約を新規締結するか、就業規則で労働条件を担保する。
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