M&A取引で対象会社の負債リスクをどう承継・遮断するかは、取引スキーム選択の核心論点である。事業譲渡・株式譲渡で承継ルールが異なり、詐害行為取消・商号続用責任など見落としやすい論点もある。
この記事の結論
- 株式譲渡=会社の負債すべて承継。簿外債務・偶発債務もそのまま
- 事業譲渡=個別合意で承継対象を選別。ただし詐害的事業譲渡・商号続用責任に注意
- 会社分割=債権者異議手続で承継範囲を確定。最も整理された手続
スキーム別の負債承継ルール
対比表
- 株式譲渡 負債:すべて承継/簿外債務:承継/追加リスク:DD不足分は買主負担
- 事業譲渡 負債:合意で選別/簿外債務:選別可/追加リスク:詐害行為・商号続用責任
- 会社分割 負債:分割計画書で確定/簿外債務:選別可/追加リスク:債権者異議手続が必要
事業譲渡における詐害的事業譲渡
民法424条の詐害行為取消権により、債務者(譲渡会社)が債権者を害することを知って事業譲渡を行った場合、債権者は譲渡を取り消すことができる。譲受人が善意(債権者を害することを知らなかった)の場合は取消されない。
債務超過状態の会社からの事業譲渡は詐害的とされやすい。対価が著しく安価、譲渡会社の同族関係者への譲渡、譲渡後の譲渡会社の倒産などが典型的なリスクパターン。
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事業譲渡で譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合、譲受会社は譲渡会社の事業上の債務についても弁済する責任を負う(会社法22条1項)。例外的に、譲受会社が譲受後遅滞なく事業上の債務を弁済しない旨を登記したか、譲渡会社・譲受会社から債権者に通知した場合は責任を負わない(同条2項)。
実務的には商号を変更するか、22条2項の登記・通知を確実に行うことで責任を遮断する。
会社分割の債権者異議手続
会社分割では、分割計画書に承継債務を明記し、債権者異議手続(会社法789条等)を経る必要がある。手続を怠ると、債権者から無効主張・追加請求のリスクが残る。
債権者異議手続:(1)官報公告および各債権者への個別催告、(2)異議申出期間(1ヶ月以上)、(3)異議申出債権者への弁済・担保提供。
簿外債務リスクへの対応
- DDでの徹底調査:労務・税務・環境・訴訟の各観点で網羅的調査
- 表明保証:簿外債務不存在の保証
- 補償条項:表明保証違反時の補償
- エスクロー:取引価格の一部を留保
- 表明保証保険(RWI):保険金で簿外債務リスクをカバー
- スキーム選択:簿外債務リスク高なら事業譲渡で選別承継
実務での選択フロー
- 対象会社の財務状況確認:債務超過・倒産懸念の有無
- 許認可・契約の調査:株式譲渡なら維持可・事業譲渡なら再取得必要
- 従業員数・労務リスクの調査:個別同意取得の現実性
- 簿外債務リスクの評価:DD結果に基づく
- 税務シミュレーション:株式譲渡・事業譲渡・会社分割の比較
- スキーム決定:上記4要素を総合判断
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