「会社の借入に、自分の名前が入ったまま何年も経っている」——そう気づきながら、でも何から動けばいいかわからない、という社長は少なくありません。
個人保証を外したい、という気持ちはある。でも銀行に言い出すタイミングがつかめない。断られたらどうなるか不安。顧問弁護士には「法律の話になってから相談するもの」だと思っていて、まだ相談していない。
この「言葉になりきっていない不安」のまま放置していると、経営判断に見えないブレーキがかかり続けます。この記事では、顧問弁護士を使って個人保証を外すための判断の順番と、失敗する構造を具体的に解説します。
個人保証を外したいのに動けない理由は何か
個人保証の問題は、「法律問題」である前に「判断のタイミングを見失っている問題」です。多くの社長が、次のような状態に陥っています。
- 「会社の業績が上向きになったら交渉しようと思っている」
- 「銀行との関係を壊したくないから言い出せない」
- 「個人保証が外れるものだと思っていなかった」
この状態には共通の構造があります。「個人保証を外す」という選択肢を、自分が主体的に動けるものとして認識できていないのです。
銀行から求められたものだから、銀行が「外してよい」と言うまで待つしかない——そう思い込んでいる社長は多い。でも実際には、経営者保証ガイドラインという仕組みがあり、一定の条件を満たせば社長が主体的に外しに行ける交渉の土台があります。
知らないまま待つのか、知ったうえで動くのか。この差が、数年後の経営判断の自由度を大きく変えます。
企業の法律問題でお困りの経営者・法務担当者様へ
弁護士法人ブライトは、契約書・債権回収・労務トラブル・M&Aを伴走支援する「みんなの法務部」です。
弁護士歴平均15年以上のチームで、120社超の顧問先と日々向き合っています。
個人保証が外れる条件の構造を知っておく
2014年に策定された「経営者保証に関するガイドライン」(通称・経営者保証ガイドライン)は、金融機関と経営者の双方が参照する自主的なルールです。法的拘束力はないものの、金融機関は「合理的な理由なく拒否できない」とされており、実務上の交渉において大きな意味を持ちます。
このガイドラインにおいて、個人保証を外すために重要とされるのは、主に以下の3つの観点です。
- 法人と個人の財産・経理が明確に分離されているか(役員報酬の適正化、私的流用がないかなど)
- 財務基盤が健全であるか(収益力の安定、過大な借入がないかなど)
- 情報の透明性があるか(財務諸表の開示、正確な経営実態の説明ができるかなど)
これらの条件を「整えてから交渉する」のか、「整えながら交渉する」のかによっても、戦略は変わります。顧問弁護士の役割は、この条件整備と交渉戦略の両方に関わることです。
「うちの会社は条件が整っていないから無理だろう」と自己判断して諦めているケースも多いですが、何が不足していて、何を補えば交渉できる状態になるかを整理するのが、顧問弁護士の仕事です。
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顧問弁護士は「揉めてから使う人」ではない
個人保証を外す交渉において、顧問弁護士はどんな役割を果たすのでしょうか。
多くの社長は、弁護士を「トラブルが起きてから呼ぶ人」だと思っています。ところが、個人保証の問題に限っては、揉める前に動くことが最も効果的です。
具体的には、顧問弁護士は次のような場面で力を発揮します。
- 経営者保証ガイドラインに照らして、現状の会社がどの条件を満たしているか・いないかを整理する
- 銀行との交渉前に、どのような資料・説明を準備するかをアドバイスする
- 交渉の場に同席し、金融機関に対して法的根拠を示しながら保証解除を求める
- 金融機関が拒否した場合に、その理由の合理性を検証し、再交渉の道筋をつける
銀行は「社長が個人で来た交渉」と「弁護士が関与している交渉」では、対応の重みが変わります。これは脅しではなく、金融機関も「合理的な交渉の場」として捉えなおすための仕組みです。
顧問弁護士は社長の判断を奪う人ではありません。社長が「なぜ断られたのか」「次に何をすべきか」を判断できるよう、情報と戦略を整えるパートナーです。
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失敗事例の構造:なぜ相談が遅れ、なぜ証拠がなかったのか
顧問弁護士への相談が遅れた結果、不利な状況に陥るケースには共通した構造があります。
「まだ急がなくていい」という先送りが積み重なる
個人保証の問題は、今日明日に何かが起きるわけではありません。だから「いつか外しに行こう」という意識のまま、3年、5年が過ぎていきます。この間に会社の財務状況が変わり、「今なら交渉できた」タイミングを逃すことがあります。
業績が好調なうちに個人保証の解除を交渉するのが最も有利な局面です。銀行も「必要性が薄れている」と感じているときこそ、条件交渉に応じやすい。逆に業績が悪化したタイミングで「外したい」と言っても、銀行は応じません。
「言った・言わない」で揉めたときに証拠がない
銀行との口頭交渉だけで「前向きに検討します」という言質を得ても、後から「そのような約束はしていない」と言われるケースがあります。交渉経緯のメモ・メール・議事録がなければ、後から証明できません。
証拠は、紛争になってから急に作れるものではありません。交渉の段階から、何を話し合い、何が合意され、何が未決定かを文書で残す習慣が必要です。これは弁護士と一緒に進めることで、自然に身につきます。
「外れた」と思っていたら、実は書面が不十分だった
「保証を外してもらった」と認識していたのに、実際には保証書が正式に撤回されておらず、後になってトラブルになるケースもあります。口頭の約束や「今後は求めない」という銀行担当者の発言は、法的な根拠になりません。
保証解除が完了したと言えるのは、保証契約の変更合意書や保証書の返還・廃棄確認書面など、書面で確認が取れた時点です。ここまでを顧問弁護士と一緒に確認する必要があります。
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結局、うちの会社ではどう考えればいいのか
「自社に当てはめると、何から考えればいいのか」——それが最も実用的な問いです。以下のフローで整理してみてください。
ステップ1:今の保証内容を整理する
まず、現在どの金融機関のどの借入に対して、どのような形で個人保証に入っているかを一覧で把握します。意外と「どの保証が有効か」を正確に把握していない社長は多いです。
ステップ2:自社の財務状態を整理する
経営者保証ガイドラインの3条件(法人・個人の分離、財務健全性、情報透明性)に照らして、現状を確認します。すべて満たしている必要はなく、どの条件が整っていて、何を補えば交渉できるかを見極めることが重要です。
ステップ3:顧問弁護士に現状を共有し、戦略を立てる
弁護士に「うちの状況で外せますか?」と聞くだけで構いません。顧問弁護士は法律の窓口ではなく、経営判断のパートナーです。「今すぐ外せる」「〇〇を整えてから動くべき」「この銀行から先に交渉すべき」など、判断の材料を揃えてくれます。
ステップ4:銀行との交渉を設計する
どのタイミングで、何を準備して、誰が交渉の場に出るか——これを事前に設計します。弁護士が同席する場合と社長単独で交渉する場合では、準備すべき内容も変わります。
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再発防止策:個人保証を「求められにくい会社」になるために
個人保証を外したあとで大切なのは、「また求められない体制」を作ることです。金融機関が個人保証を求める根本には、「この会社は経営者個人に依存している」という懸念があります。この懸念を解消し続けることが、保証を求められにくくする構造的な対策になります。
- 財務情報の定期的な開示習慣をつける:決算書だけでなく、試算表や資金繰り表を金融機関に定期的に提供することで、透明性への信頼が積み重なる
- 法人・個人の経理分離を継続的に徹底する:一度整えても、日常の経営判断の中で崩れていくことがある。顧問弁護士・顧問税理士と連携してチェックする仕組みを持つ
- 新規借入の際に保証なしを交渉する習慣をつける:保証なし融資(信用保証協会の不要な枠組みなど)について、毎回の交渉で意識的に確認する
- 事業承継・M&Aを見据えた早めの保証整理:後継者への保証の引き継ぎを避けるためにも、事業承継の5〜10年前から保証の整理を進める
顧問弁護士は、この「再発防止の仕組み」を一緒に設計するパートナーでもあります。相談すればするほど、会社の法務・財務の体制は強くなります。
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よくある質問(Q&A)
Q1. 個人保証を外したいと銀行に言ったら、関係が悪化しませんか?
適切な準備と根拠を持って交渉すれば、関係悪化のリスクは低くなります。むしろ「経営者保証ガイドラインに基づいて相談したい」という形で切り出すことで、金融機関も正式な協議として受け止めます。感情的な交渉ではなく、ガイドラインを根拠にした論理的な交渉が関係を守ります。顧問弁護士が同席することで、「感情論」ではなく「法的根拠のある場」として整理できます。
Q2. 業績が好調でないと、保証を外す交渉は難しいですか?
業績が厳しい状況での交渉は確かに難しいですが、不可能ではありません。財務改善の計画を具体的に示したり、一部保証の解除から交渉を始めたり、段階的な戦略を取ることができます。また、2023年4月からの「スタートアップ・創業に対する経営者保証の不要化」など制度改正も続いており、状況は変わってきています。諦める前に一度、顧問弁護士と現状を整理してみてください。
Q3. 顧問弁護士がいない場合、まず何をすれば良いですか?
まず「今ある保証の内容と金額の一覧」を作ることから始めてください。どの保証がいつ結ばれ、どのくらいの残債があるかを把握するだけで、動き出せる状態が変わります。そのうえで、経営者保証の交渉経験のある弁護士に相談することをおすすめします。単発相談ではなく顧問契約の形を取ることで、交渉の全体戦略を継続的に設計できます。
Q4. 保証を外した後、また別の借入で保証を求められたらどうすればいいですか?
保証なし融資を求める交渉は、借入のたびに行うことが重要です。「前回は保証なしで対応できたこと」を実績として活用し、交渉の積み重ねを作っていきます。また、金融機関が保証を求める理由を毎回確認し、「何を改善すれば次は不要か」という対話を続けることが、長期的な関係構築につながります。
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