「顧問契約を結んでいるのに、なんとなく使えていない気がする」「相談しても答えが遅い。それとも自分の使い方が悪いのか」——こういう感覚、頭の中にあっても、なかなか言葉にならないまま放置していませんか。
顧問弁護士の変更や解約を考えるとき、多くの社長が直面するのは「どう切り出せばいいのか」「変えて本当に良くなるのか」「手続きは複雑なのか」という漠然とした不安です。しかも、相手は弁護士。なんとなく気まずく、後回しにしやすい話題です。
この記事では、顧問弁護士の解約・変更を考えている社長が、後悔しない判断をするための手順と考え方を整理します。法律の教科書的な説明ではなく、「うちの会社ではどう動けばいいのか」に答えることを目的に書いています。
「なんとなく合わない」は、なぜ言葉にしにくいのか
顧問弁護士への不満は、クレームとして表面化しにくい性質を持っています。その理由は三つあります。
- 比較対象がない:別の弁護士を使ったことがなければ、今の状態が「普通」なのか「物足りない」のかを判断する基準がありません。
- 法律の専門知識がないと評価しにくい:「答えが曖昧だった」「もっと踏み込んでほしかった」と感じても、それが弁護士として正しい回答だったのかどうか、社長には判断しにくい。
- 「お世話になっている」という感覚が残っている:過去に助けてもらった経緯があると、変えることへの罪悪感が先に立つ。
この構造の中にいると、不満は感じているのに動けない状態が続きます。「もう少し様子を見よう」「こちらの使い方の問題かもしれない」と自分に言い聞かせながら、じわじわと時間だけが経過していく。
ただ、顧問弁護士との関係は、法人の意思決定の質に直結しています。合わないまま使い続けることのコストは、月額顧問料だけでは測れません。
企業の法律問題でお困りの経営者・法務担当者様へ
弁護士法人ブライトは、契約書・債権回収・労務トラブル・M&Aを伴走支援する「みんなの法務部」です。
弁護士歴平均15年以上のチームで、120社超の顧問先と日々向き合っています。
変更を決断する前に確認すべき三つの判断基準
感覚的な不満だけで動くのは危険です。一方で、判断を先送りし続けるのも会社のリスクになります。以下の三点を自社に当てはめて、冷静に確認してください。
①レスポンスの質と速度
急いで判断が必要な場面で、翌日以降まで回答がもらえなかったことはありますか。法的判断を伴う意思決定は、スピードが命になる局面があります。「顧問弁護士に聞いてから決める」という習慣を持てているかどうかも重要です。連絡が取りにくいと感じていれば、顧問契約として機能していない可能性があります。
②相談できる範囲の広さ
実際の経営現場では、労務トラブル、取引先との契約、社内規程の整備、不動産管理会社との交渉など、多様な場面で法的判断が求められます。特定の分野しか対応してもらえない、あるいは「それは対応外です」と言われた経験があるなら、顧問契約の内容を見直す必要があります。
③「予防」に使えているか
顧問弁護士の本来の価値は、揉めてから呼ぶのではなく、揉めないために使うことにあります。契約書のリーガルチェック、労働条件通知書の確認、新しい業者との取引前の相談——こういった「起きる前の相談」に使えているかどうか。事後的な対応しかできていないなら、関係性そのものを見直すタイミングかもしれません。
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顧問弁護士を解約・変更するときの具体的な手順
「変えよう」と決めたあと、どう動けばいいのか。手順を順に説明します。
ステップ1:顧問契約書を確認する
まず、現在の顧問契約書を確認してください。確認すべきポイントは以下の通りです。
- 契約期間はいつまでか(自動更新の有無)
- 解約の申し入れに必要な予告期間(1ヶ月前・3ヶ月前など)
- 中途解約時の違約金・ペナルティの有無
- 進行中の案件がある場合の処理方法
多くの顧問契約では、解約には一定期間前の申し入れが必要です。これを見落とすと、解約の意思表示をしたのに契約がしばらく継続し、顧問料を払い続けることになります。実際に、「中途解約条項がないため、更新拒否の通知をしなければ1年分の報酬支払いが必要になる」というケースも存在します。契約書の確認は、変更を決める前に必ず行ってください。
ステップ2:進行中の案件を整理する
現在、顧問弁護士に依頼している案件がある場合、解約のタイミングに注意が必要です。訴訟・交渉・労働審判などが進行中であれば、同弁護士に解決まで担当してもらうか、引き継ぎ先を確保してから移行するかを判断してください。
途中で担当弁護士が変わることは、相手方にとって有利に働く場合があります。引き継ぎの際には、事件の経緯・証拠書類・やり取りの記録をすべて書面で受け取ることが重要です。
ステップ3:解約の意思表示を書面で行う
解約の申し入れは、口頭ではなく書面(メール可)で行い、記録に残すことを徹底してください。「言った・言わない」のトラブルを防ぐためでもありますが、契約書上の「申し入れ日」が起算点になる場合があるため、証拠を残す意味でも必須です。
ステップ4:次の顧問弁護士の選定を先行させる
解約を決めてから探し始めると、法務サポートが空白になる期間が生まれます。次の顧問弁護士の選定は、解約の意思決定と並行して進めてください。契約書に触れてはいけない期間があるわけではありません。複数の事務所と面談し、自社の業種・課題に合っているかを確認してから決断してください。
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変更が遅れた会社の構造——失敗事例から学ぶ
「あのとき早く動いておけばよかった」という相談は少なくありません。なぜ変更の判断が遅れるのか、その構造を整理します。
なぜ相談が遅れたのか
社長が相談を先送りにする最大の理由は、「今すぐ困っていない」という状態です。顧問弁護士への不満はあるものの、緊急の案件が発生していないため「まあいいか」と後回しにしてしまう。ところが、問題はいつも急に起きます。労務トラブル、取引先とのクレーム、契約書の解釈トラブル——こういった事態が起きてから「この弁護士には頼みたくない」と感じ始めても、もう遅い。
なぜ証拠が残っていなかったのか
変更前の弁護士とのやり取りが口頭や電話だけで行われていた場合、後になって「何を相談し、何を言われたのか」の記録が残っていないことがあります。これは、引き継ぎ時に新しい弁護士が経緯を把握できないだけでなく、万一「弁護士のアドバイスが不適切だった」という話になったとき、事実確認ができなくなるリスクでもあります。
証拠は、紛争になってから急に作れるものではありません。顧問弁護士とのやり取りは、メールやチャットなど記録に残る形で行う習慣をつけておくことが重要です。
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うちの会社では、どう考えればいいのか
顧問弁護士の変更は、「今の弁護士が悪いかどうか」の問題ではありません。「今の関係が、自社の成長と意思決定に合っているかどうか」の問題です。
会社が成長するにつれて、必要な法務サポートの内容も変わります。創業期は単純な契約書チェックで十分だったとしても、従業員が増え、取引先が多様化し、不動産や投資の判断が増えてくれば、求められる弁護士の役割は変わります。
顧問弁護士の変更を考えるタイミングとして、以下を目安にしてください。
- 事業の転換期(新規事業立ち上げ・M&A・業態変更)
- 従業員規模が大きく変わったとき
- 取引先や契約関係が複雑になってきたとき
- 顧問弁護士に相談する頻度が明らかに減ってきたとき
- 「相談するのが面倒」と感じるようになったとき
逆に言えば、顧問弁護士を「揉めたときだけ使うもの」と捉えているうちは、どんな弁護士に変えても同じかもしれません。変更を機に、顧問弁護士との関係の使い方そのものを見直すことが、本質的な再スタートになります。
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再発防止:次の顧問弁護士と「使える関係」を作るために
変更後に同じ不満を繰り返さないために、最初の関係設計が重要です。
①相談のしやすさを最初に確認する
顧問契約を結ぶ前に、「こういう案件を相談したいのですが、対応できますか」と具体的に確認してください。「なんでも対応できます」という言葉より、「それは得意です。こういう場合はこう対応します」と具体的に答えてくれる弁護士を選ぶべきです。
②連絡方法と応答時間を取り決める
電話・メール・チャットのどれを使うか、何営業日以内に回答するかを最初に確認しておくと、後の「レスポンスが遅い」という不満が予防できます。
③定期的な「法務ドック」を依頼する
会社の法務リスクの健康診断として、定期的に現状を見てもらう習慣を作ることをお勧めします。特定の問題が起きたときだけ相談する関係ではなく、会社の状況を継続的に把握している弁護士がいることで、リスクの発見が早くなります。社長の判断の質は、相談すればするほど上がっていきます。
④社内の相談ルートを明確にする
「どんなことを弁護士に聞いていいのか」が社内で共有されていないと、顧問弁護士がいても使われない状態になります。契約書・採用・取引先トラブルなどのカテゴリで「これは弁護士に確認する」というルールを社内に浸透させることが大切です。
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よくある質問(Q&A)
Q1. 顧問弁護士を変えると、相手方に不利に見られますか?
進行中の訴訟や交渉がある場合は、弁護士の交代が相手方に伝わり、「揉めているのかな」と感じさせることはあります。ただ、顧問契約の変更自体は外部に知られるものではありません。問題があるとすれば、進行中の案件の引き継ぎが不十分なことです。そこだけ丁寧に対処すれば、変更そのものがデメリットになることはほとんどありません。
Q2. 解約の違約金はどのくらいかかりますか?
これは契約書の内容によります。一般的には、解約の予告期間を守れば違約金は発生しないケースが多いですが、自動更新期間中の中途解約に対して残期間分の報酬支払いを求める契約も存在します。まず自社の契約書を確認し、不明点があれば第三者の弁護士に内容を確認してもらうことをお勧めします。
Q3. 変更先の弁護士を探すとき、何を基準にすればいいですか?
「実績の数」よりも、「自社の業種・課題に対して具体的に答えてくれるか」を優先してください。初回面談の場で、実際に抱えている問題を話してみて、その答えの質とスピードを見てください。また、担当弁護士が固定されるかどうか、チーム体制で対応してくれるかも確認しておくと安心です。
Q4. 顧問弁護士がいるのに、別の弁護士に相談してもいいですか?
問題ありません。現在の顧問弁護士の回答に不安を感じたとき、セカンドオピニオンを取ることは社長の当然の判断権です。ただし、進行中の案件に関しては、複数の弁護士に並行して相談すると情報管理上のリスクがあるため、案件の性質によって使い分けることをお勧めします。
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